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概要:世界中からの観光客たちを乗せて、浅草の街を走る人力車。力自慢の男たちの世界に見えるが、人材のハイスペック化、多様化がじわりと進んでいる。
浅草といえば人力車。だが、最近は外国人観光客の増加で語学力やエンタメ力が試されているという。
世界中からの観光客たちを乗せて、浅草の街を走る人力車。力自慢の男たちの世界に見えるが、人材のハイスペック化、多様化がじわりと進んでいる。
アジアや欧米からの観光客の増加で、英語はほぼ必須。中国語やフランス語で観光客に話しかける車夫もいれば、女性たちの進出も進む。
体力、語学力、そして客に選ばれるエンタメ力も求められる。浅草で鍛えられた学生は、就活でも強さを発揮しているという。
個々の客のニーズに応えられる英語力
浅草駅前の道路わきには人力車が並ぶ。「駐車場所」は業界と警察の取り決めで、決められた場所がある。
「もう、うちでは英語は必須。語学力が乏しい人は、採用していない」
えびす屋浅草の所長・梶原浩介さんは、こう話す。
えびす屋は京都を本拠地とし、鎌倉や宮島といった各地の観光地で人力車事業を手がけている。浅草では車夫100人ほどを抱える最も大きな業者だ。そのうち、およそ半分を学生のアルバイトが占める。
インバウンド元年とも呼ばれた2015年ごろから、明らかに外国人観光客が増えた。えびす屋の利用者のうち外国人が占める割合は、5割に迫る勢いだという。
小樽や湯布院などで人力車の仕事をしてきた梶原さんが、浅草に転勤してきて6年近くになるが、2年ほど前から採用にも変化が現れている。
コミュニケーションが得意な人の場合、採用してから語学を鍛えるという選択肢もないわけではないが、面接中に突然英語で話しかけてみて、「ぜんぜん無理です」と拒否感を示す人は採用には至らない。
「飲食店なら、決まった英語を話せればなんとか仕事になるし、マニュアルにもできる。しかし、人力車のお客さんからは、突拍子もない質問がたくさん飛んでくる。個々のお客さんのニーズに応えられる語学力がないと」
と、梶原さんは言う。
梶原さん自身も、浅草で仕事を始めてから、現場で英語を身に着けた。「踏み台を使ってください」など、人力車の仕事で必要な言葉をひとつ一つ覚え、雷門やアサヒビールのホールといった、ランドマークについては、まずは説明を丸暗記する。
「人力車にはビジネスの基本がある」
浅草・雷門前では、車夫たちが観光客らを相手に営業を繰り広げている。競争は激しい。
同じく、浅草で人力車事業を手がける「時代屋」の社長・藤原英則さんは、「浅草は、まちそのものがテーマパークで、人力車はアトラクションのようなもの。車夫はエンターテイナーでないと」と話す。
時代屋が浅草で本格的に営業を始めたのは1997年。浅草では最も古くから観光人力車を手がける。
車夫に求められる能力は、なかなか幅が広い。
観光客に声をかけ、観光コースを提案する営業力
人力車を引いて走る体力
観光スポットのエピソードをわかりやすく説明する話術
高い語学力
「昔のように、口下手だけど足腰は丈夫というのでは勤まらない」(藤原さん)
車夫にとっては、容姿もひとつの重要な要素ではある。2016年にはイケメンの車夫たちを撮影した『浅草 人力車男子』なる書籍も出版されている。
人力車と丈夫な体があれば、とりあえず事業は始められるため、独立する人も多い。この数年、インバウンド需要の盛り上がりで独立する車夫が相次ぎ、いまでは、概算で160人〜170人ほどの車夫が浅草で人力車を引いているという。
人数が増えて競争が激しくなり、求められる資質の幅が広い分、個々の力量の差ははっきり表れる。週5日働いて月収が20万円に届かない人もいれば、時期にもよるが100万円を超える人もいるという。えびす屋の梶原さんはこう話す。
「人力車の仕事には、ビジネスの基本が詰まっている。企業の人事担当者と話す機会も多いが、車夫を経験した学生は、就活でも強い」
筋トレで鍛えた女子学生も
上智大学4年の三木梨紗子さん。3年半前からアルバイトとして人力車を引いている。
上智大学4年の三木梨紗子さん(23)は、3年半前からえびす屋でアルバイトをしている。高校時代、アメリカに留学していため、英語を使う仕事がしたかった。
人力車は、人が乗っていなくても80キロ、客が2人乗れば200キロを超える。
「研修のときは重くて、重くて。でも、現場に出てみて、大変なぶん、やりがいのある仕事だとすぐに思いました」(三木さん)
現場に出ても、観光客はなかなか話を聞いてくれない。なかなか立ち止まってくれない。
「最初は『こんな場所があります』とか一方的に話していたけれど、それではだめでした。『どこから来たんですか』とか『どこに行くんですか』とか、まずはお客さんのことを知るように心がけたら、少しずつ乗ってくれようになりました」(三木さん)
女性が増えたといっても、100人余りの車夫がいるえびす屋で、現在女性は7人とまだ少数だ。団体客に複数台の人力車に乗ってもらうことがあるが、男性たちが引く人力車に混ざると、三木さんは遅れがちだった。
アルバイトと学校の合間に走り込みと筋トレをして、体を鍛えた。
就活の面接でも、人力車を引いていた女性はなかなかいない。面接官の食いつきはよく、10社ほど受けたうち3社から内定が出た。
三木さんは春から、大手人材会社に入社する。
「コミュニケーションは得意なほうではなくて、どちらかというと人見知り。でも、初対面の人でも、すこしはうまくしゃべれるようになったかな」
空手の世界3位
5年ほど前から人力車を引いている若林遼さん。スタンダップコメディアンを目指している。
若林遼さん(28)は、時代屋の車夫として人力車を引くようになって5年になる。
アメリカの大学の日本校を卒業し、アルバイトをしながら、空手の道場で訓練を続けていた。2013年には、KWU(極真ワールドユニオン)の世界大会、75キロ級で3位になっている。
人力車の運転は難なく身につけたが、営業には苦労した。
「自分は、内向的なところがあるので、最初は向いてないかなと思った」
一方で、大学時代は英語で教育を受けたため、語学は強みだった。外国人観光客に率先して声をかけるようにしたら、少しずつ仕事が取れるようになった。最近は、中国語の独学も始めた。
若林さんは、英語で漫談をするスタンダップ・コメディアンを目指して、外国人客の多いバーなどで、ステージに立っている。あと2、3年日本でステージを踏んだら、アメリカに渡るつもりでいる。
「人を楽しませる技術は、人力車の仕事で磨くことができる。そのままコメディに活かせると思うんです」
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