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概要:OB訪問に来た女子大学生にわいせつ行為をしたとして、大手ゼネコン・大林組の社員が強制わいせつ容疑で逮捕された。就活の現場でいま何が起きているのか。
就活セクハラが深刻化しているとの声が高まるなか、ついに大手企業からの逮捕者が出た。
撮影:今村拓馬
就活の実態について、とても悲しいニュースをBusiness Insider Japanが相次いで報じた。
端的に言えば、人気の大手企業で働こうとすると、レイプされることがある。後輩や自身の就活が不利になる可能性を考えると、泣き寝入りせざるを得ないという。何ともおぞましい話だ。
関連記事:OB訪問で自宅や個室で性行為強要、2人に1人の学生が就活セクハラ被害に。「選考有利」ちらつかせ
そして記事に続く2月18日、就活の一環でOB訪問に来た女子大学生にわいせつ行為をしたとして、警視庁三田署が、大手ゼネコン・大林組の社員を強制わいせつ容疑で逮捕していたことが報じられた(毎日新聞2019年2月21日)。
逮捕された27歳の男性は就活中の女子大学生とOBOGをつなぐスマートフォンアプリで知り合い、パソコンを見ながら面接指導をすると言って学生を自宅マンションに誘い、わいせつな行為をしたとされる。
男性は一部容疑を否認し、大林組は事実関係の確認中とのことだが、Business Insider Japanの調査報道の通り、就活の現場でこれまでなかった深刻な問題が起きていることは間違いなさそうだ。
企業の経営者たちはこれらの問題、事件をいまどう考えているのだろう。何が事実かわからない、だから謝罪するわけにもいかない。ただ薄々と、これだけ事例が並べばあるいは……といったところだろうか。とにかく恐ろしく、悲しい現実がそこにある。
いますぐにでも懲戒規程を見直すべき
学生たちはいまも性的ハラスメントのリスクにさらされながら就活を続けている。
撮影:今村拓馬
学生たちは人気企業、大手企業への就職に躍起になっている。先の記事に出てくる学生たちの多くは、性的ハラスメントや未遂を機に(企業との)コンタクトを拒否しているが、その後もそうしたリスクにさらされながら就活を続けていかなくてはならないわけだ。
関連記事:深刻化する就活セクハラ。OB訪問や泊まり込みインターンが温床に
この状態を放置しないために、企業側がいますぐにやらなければならないのは、従業員全員が学生との接点を持つ可能性があることを前提に、記事のような事実があり、それは決して許されない行為であると、従業員を過信せずにはっきりと伝えることだ。
従来からあるインターン、OB・OG交流が早期化していることに加え、就活の手法が多様化したことなどにより、企業の社会的責任すらロクに知らない従業員まで、学生たちとのコンタクトが日常茶飯事になっている。
いまや、懲戒規程には「業務時間内・外にかかわらず、当社への就職希望者と性的関係を持つこと及び、持ちかけること」が対象になると、はっきり明記する必要がある。また、いくつかの企業がすでに実施しているように、学生にも「当社の従業員には、20時以降、学生と接触しないよう伝えている」とはっきり開示することも重要だ。
告発のための窓口も、企業・大学双方で定めねばならない。事実無根の訴えが増えることになりかねないとして、窓口設置を躊躇(ちゅうちょ)する企業もあるかもしれない。しかし、冒頭で触れたようないくつもの問題が現実の問題として浮かび上がってきている今、避けて通ることのできない取り組みである。
選考基準の不透明さが、学生に無用の努力と覚悟を強いる
就活学生たちの努力の内容は、本当にこれからのビジネスに必要なものなのだろうか。
撮影:今村拓馬
企業にとって一番重要なことは、採用選考のブラックボックスからの脱却努力だ。
選考基準が不透明だからこそ、多様な応募者が(場合によっては)万が一のチャンスを狙って、悲壮な覚悟で応募する。企業としては基準を固定的にせず、柔軟な視点で採用を見極めたいだろう。しかしその曖昧さが、無用な努力や覚悟を学生に求める結果になっている面もある。
そうした無用な努力や悲壮な覚悟の行き着く先が、OBOGの立場を利用した不当な要求を呼び込む結果になっているのかもしれない。
企業は人材の選考基準や期待するスキルを、もっとオープンにしてよいのではないか。もし潜在的な能力や組織適性を重視した選考を行いたいのであれば、大学研究室などからの紹介を重視してもよい。
人事コンサルタントという職業柄、さまざまな企業の採用選考を目にするが、人気の大手企業に入るために学生たちが努力している実際の内容は、いずれも本当にこれからのビジネスに必要なものなのだろうかと考えさせられることが多い。
表層的、形式的なコミュニケーション力やシート記入力を身につけるのに躍起になることに、どれだけの意味があるのか。統計的な分析力や文献を読み解くスピード、プログラミングの基礎知識や思考法について、日本の学生は世界に遅れを取っていると言われる中ではなおさらではないか。
「目指せブランド企業」の呪縛が解ける日が来る
有名企業や大企業のネームバリュー、ブランド力は確かに魅力的だ。しかし、テクノロジーの進化は間違いなく「本当の力」を見極める方向に向かっていく。
撮影:今村拓馬
また、学生側に非があるものではないのだが、心に留めておいてほしいことが一つある。「社歴ブランド社会」は決して長くは続かないという、社会への期待を持ってほしいということだ。
いま多くの学生が1社目ブランドの重要性を強く認識している。つまり、「新卒でA社に入社後……」という職歴の最初に出てくるA社のネームバリューが、その人の職業能力やキャリア形成においてきわめて重要になるからだ。
A社のネームバリューがどうでもいいことかと言うと、現実にはそんなことはなく、優秀な人材を輩出する有名企業の出身者はさまざまな分野で活躍している。ビジネス課題への感度の高い組織で基礎を身につけ、最新のテクノロジーに接したり、貴重な人脈にアプローチしたりする機会も多いのだから、当然といえば当然だ。
そんな企業に新卒で採用された経歴、ネームバリューは、その後も間違いなく有利にはたらく。スタートアップの世界ではとくに顕著だ。ブランド企業出身者は、スキルや実績以上に転職活動で有利にキャリア形成していく傾向もある。
しかし、それはあくまで「これまで」の話だ。
テクノロジーは一人ひとりのビジネススキルをより合理的に見極める方向に進化している。学歴・社歴が並んだ履歴書を、学生時代の成績表のように企業が評価する時代は、もはやそう長くは続かない。そうしなければ、高齢化が進むなかで成長産業に人材をシフトしていく日本の生存戦略は成り立たない。
ネームバリューやブランドを隠れ蓑に、これからの時代を担う就活生を性的ハラスメントで迎えるような従業員を野放しにしたり、そうしたプロセスを経て入社させてしまうような企業に、身も心も捧げる必要などもはやありはしない。
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秋山輝之(あきやま・てるゆき):株式会社ベクトル取締役副社長。1973年東京都生まれ。東京大学卒業後、1996年ダイエー入社。人事部門で人事戦略の構築、要員人件費管理、人事制度の構築を担当後、2004年からベクトル。組織・人事コンサルタントとして、のべ150社の組織人事戦略構築・人事制度設計を支援。元経団連(現日本経団連)年金改革部会委員。著書に『実践人事制度改革』『退職金の教科書』。
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