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概要:サウジアラビアが「スイング・プロデューサー」という伝統的な役割を再び担うようになった。自国の生産量を急激に減らして原油市場の需給を引き締め、価格を引き上げるという立場だ。 石油輸出国機構(OPEC)の事実上のリーダーであるサウジは、自国の生産量を十分に減らせば、いつでも現物市場をタイトにして価格をつり上げ、カレンダースプレッドを期近物が期先物よりも価格が高い状態の「バックワーデーション」にする能力があること
John Kem
[ロンドン 20日 ロイター] - サウジアラビアが「スイング・プロデューサー」という伝統的な役割を再び担うようになった。自国の生産量を急激に減らして原油市場の需給を引き締め、価格を引き上げるという立場だ。
石油輸出国機構(OPEC)の事実上のリーダーであるサウジは、自国の生産量を十分に減らせば、いつでも現物市場をタイトにして価格をつり上げ、カレンダースプレッドを期近物が期先物よりも価格が高い状態の「バックワーデーション」にする能力があることをを繰り返し示してきた。
こうした価格維持手法には分かりやすい問題がある。市場シェアが犠牲になってしまうのだ。サウジが減産して市場を引き締めるほど、他の産油国の増産を促してしまうのである。
その場合、価格の上昇は米国における原油掘削拡大と生産ブームを招き、いずれはサウジとしても、さらに減産を強化するか価格防衛戦略を断念するかの選択を迫られることになる。
サウジがこのジレンマから逃れられたことはなく、同国の石油政策は、価格維持優先と生産量維持優先を交互に繰り返してきた。
サウジがいつも苦労してきたのは、減産時期からの出口戦略をどう組み立てるかという点である。減産政策をあまりにも長く続ければ、市場の引き締めが過剰になり、価格が持続不可能な水準に達してしまう。
その結果、たいていは消費の伸びの減速とサウジ以外の産油国による増産により、市場は再び供給過剰に逆戻りし、新たな減産が必要になってしまう。
サウジは2008年、2014年、2018年と同じ失敗を繰り返した。十分早い時期に増産に転じなかったために、持続不可能な価格インフレの条件を生み出してしまい、その後の価格下落の種をまいてしまったのだ。
他の石油輸出国と同様、サウジにとっても原油価格の上昇は短期的には利益をもたらす。だがその後は、市場に天井を設けることが困難になってしまう可能性がある。
サウジの非公式な価格目標は、ある程度柔軟なものになる傾向があり、価格の上昇につれて少しずつ上方修正されがちだ。
2018年1─9月、サウジは市場の引き締めが過度に進行するのを放置し、原油価格は1バレル80ドルを超えた。この水準は持続不可能であることが分り、消費成長の減速と米国産シェールオイルの急増を招いた。
サウジの市場管理の足を引っ張ったのは、ホワイトハウスの移り気である。米国政府はイランの石油輸出をゼロに抑える強硬姿勢を見せたかと思えば、その後は寛大な制裁の適用除外措置を認めた。
問題は、サウジが2019年も同じ失敗を繰り返すかどうかだ。経験上、その可能性はある。
<実質的にはサウジ次第>
サウジ高官は、1980年代半ば以降、「スイング・プロデューサー」としての役割を控えめに見せようとすることが多くなっている。当時、サウジアラビアは他国が増産するなかで生産量を抑えていた。
サウジは、OPEC、さらに最近ではロシアとオマーンを含む拡大グループ(OPECプラス)全体に減産を広げていくことの重要性をしきりに強調してきた。
だが過去の経緯を見る限り、スポット価格とカレンダースプレッドに影響を与えるという点で決定的なのはサウジによる減産で、真の「スイング・プロデューサー」と呼べるのはOPECやOPECプラスではなく、サウジである。
これまでサウジは常に、自国の生産量を削減することにより、北海ブレントのスポット価格を上昇させ、カレンダースプレッドをバックワーデーションにすることができた。
石油依存のグローバル経済が成長し、石油消費量が順調に伸びていた時期、そしてライバルの産油国が戦争や経済、国内の社会不安で混乱していた時期には、サウジの影響力が高まった。
サウジは価格支配力を最大化するために、また外交上の理由により、他の産油国との連携を構築することを好んできた。
だが、グローバルな生産・消費バランスを変えるほどの規模と柔軟性を持つ石油輸出国はサウジだけであり、したがって市場価格とスプレッドを変化させる主因は、原油生産量に関する同国の政策だったのである。
<「スイング」復活>
12月初めにOPECプラスの賛同を得た今回の減産も、このパターンに整合している。
OPECプラスは、2019年の最初の6ヶ月間、合計日量120万バレル(bpd)減産することで合意した。減産分は、OPEC(80万bpd)とロシアを中心とする同盟国(40万bpd)のあいだで分担する。
サウジは結局、1月は分担を約束していた32万bpdを超えて、38万bpd減産することになった。これは最初の1ヶ月にOPECが達成した減産量合計の半分以上に相当する。
サウジが積極的に減産は、他のOPEC諸国やOPECプラス諸国の一部が合意を達成できなかった分を穴埋めした。
ファリハ・エネルギー相は、最近の英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューのなかで、サウジはさらに踏み込み、11月の1100万bpd以上から3月には980万bpdへと、100万bpd以上の減産を公約すると述べた。
サウジの減産により、ブレント先物の期近物の価格は12月末に比べて1バレルあたり15ドル(30%)も上昇し、6カ月のカレンダースプレッドは期近が期先を1.70ドル下回る「コンタンゴ」から、45セントのバックワーデーションへと転じた。
価格への影響を後押ししたのが、グローバル経済がリセッションを回避するだろうという楽観論が強まったこと、そして米国の対ベネズエラ制裁の影響、ヘッジファンドによるポジション積み上げである。
<「いつか来た道」か>
今年、グローバル経済がリセッションや長期的な減速を回避すると仮定すれば、石油市場は2019年を通じて徐々にタイトになっていくだろう。
昨年のアプローチを見る限り、サウジとOPECプラス諸国は、価格が70ドルを大幅に超え、恐らく80ドルを突破するまで減産を続ける可能性が高い。
結果として、またしても米国のシェール生産が加速し、石油消費量の成長が鈍化し、市場は再び供給過剰に戻り、さらなる減産が必要になるだろう。
サウジアラビアとOPECプラス諸国がこうした不安定なサイクルを止めたいのであれば、原油価格が70ドル以上に上昇するとともに徐々に減産を緩和するよう、先手先手で動く必要がある。
だが、OPECがこうした微調整において優れた手腕を見せたことは一度もなく、これまでの実績からすれば、原油価格は上方にオーバーシュートし、またしても同じサイクルをたどる可能性が高い。
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