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概要:米経済が将来新たなリセッション(景気後退)に見舞われた場合、米金融当局者がそれに対処するための利下げ余地は限定されることになりそうだ。このため、そうした不備を補うための手段についての研究が進められており、その成果は今後の金融政策運営を方向付ける可能性がある。
米経済が将来新たなリセッション(景気後退)に見舞われた場合、米金融当局者がそれに対処するための利下げ余地は限定されることになりそうだ。このため、そうした不備を補うための手段についての研究が進められており、その成果は今後の金融政策運営を方向付ける可能性がある。
米金融当局は過去数年間に注意深く利上げを行い、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は2.25-2.5%のレンジに引き上げられた。だが、新たなリセッションに陥るまでにあと数回利上げできたとしても、利下げによって成長を刺激し、インフレを安定させる余地は過去のケースよりも限られそうだ。複数の研究によれば、人口動態や他の長期的トレンドによって、この現実は恐らくニューノーマル(新たな標準)であるとされる。
このような状況の下、金融当局者は2019年を金融政策へのアプローチ再検討の年とする計画で、それには低金利環境の中でどのような戦略が最も効果的に作用するか解明することが含まれる公算が大きい。トップクラスの研究者によるこれまでの論文からは、何が議論の対象となっているのかが示唆される。
米金融当局者の講演や研究結果を踏まえると、当局はインフレの新たな枠組みについて考察するか、もしくは有効性が実証済みの量的緩和(QE)のような政策措置を議論する可能性がある。当局者はさらに、他国で近年活用されてはいるが米国では試したことのないイールドカーブコントロールといった選択肢を加えることも検討するかもしれいない。イールドカーブコントロールは連邦準備制度理事会(FRB)のクラリダ副議長が就任前のつい昨年、大学院生に講義していた話題の1つだ。
次に政策金利を補強すると想定される一連の措置と、その有効性に関する研究結果を紹介する。
一時的な物価水準目標
解決策を詳述するのに先立ち、低金利が金融当局にとって深刻な問題となる理由を見ておく意味があるだろう。
政策金利がゼロにまで引き下げられると、金融当局は経済を崖っぷちから引き戻す手だてに乏しい状況に置かれる。潜在力を下回る成長の期間が長引けば、インフレ率は伸び悩み、最終的には企業や消費者の将来的なインフレ期待も押し下げられる可能性がある。インフレ期待は将来のインフレを左右する重要な決定要因であり、それが後退すれば、いったん経済が回復したとしても、インフレ率は2%の当局目標を下回ったままで低迷することになりかねない。悪循環を整理して説明すると、低インフレ下では、FF金利の引き上げ余地が少なくなり、将来の危機に対抗するための余地も限られてしまうというわけだ。
幸いなことに、バーナンキ元FRB議長は1つの解決策を提示している。バーナンキ氏は17年の論文で、一時的な物価水準目標が効果的である可能性を指摘した。
米金融当局が現在採用している2%のインフレ目標は、現時点での目標達成を趣旨とし、過去のインフレ率が目標をどれ程下回ったか、もしくは上回ったかは不問とする形となっている。物価水準目標はこれとは異なり、金融当局は物価水準が安定的に上昇していくようにして、物価が低過ぎる時期があれば、物価高の時期を設けることによってそれを相殺することが求められる。実際には、従来型の金融政策ルールで想定されるよりも、政策金利を一段と長期間、低めに維持することが必要とされる。
金融当局が金利を据え置く方針であると人々が信じれば、インフレ率はさほど鈍化せず、危機は回避されるという考えだ。
バーナンキ氏は、政策金利がゼロの場合にのみ、この措置を使うとしていることから、「一時的」となる。ガソリン価格の上昇といった一過性の要因でインフレが高進したとしても、金融当局は好景気にあってもそれを押し下げるための政策引き締めを強いられることがなくなる。
米金融当局の現行のインフレ目標は2%を中心に上下対称とする仕組みだが、バーナンキ氏がFRBのトップクラスのエコノミストであるマイケル・カイリー、ジョン・ロバーツ両氏とまとめた最近の論文では、物価水準目標の方がより良い結果につながるとされる。
シャドー(潜在)金利
シャドー(潜在)金利の考え方は、ゼロ金利制約がなく、政策金利をマイナスに引き下げることができた場合にどの程度、追加的な緩和を経済に与えることができたのか継続的に推計し、その上で、金利を一段と長く据え置いて、逸失した緩和分を補うというものだ。
現在ニューヨーク連銀総裁を務めるジョン・ウィリアムズ氏が00年にシャドー金利についての論文を共同執筆したが、カイリー、ロバーツ両氏が論文で示した新バージョンの方がインフレ率を2%に安定的に保ち、成長の未達を小さくする上で一層の効果があるとされた。
平均でのインフレ目標達成
これは景気循環を通じて平均でインフレ目標達成を目指していくもので、物価水準目標ほどは劇的ではなく、魅力的な代替策と言えそうだ。
ウィリアムズ総裁とサンフランシスコ連銀のトーマス・マーテンス氏は今年1月の論文で、政策金利がゼロを上回っている局面で、インフレ率が2%をオーバーシュートするよう容認すれば、インフレ期待をつなぎとめるのに役立つとの分析を示した。
量的緩和
これまで説明してきたアプローチはいずれも、深刻なリセッションを受けてFF金利の誘導目標を一段と長く、低めに維持するという同じテーマに沿ったものだったが、金融当局者は利下げ以外にも危機対応のための措置を検討している。
明らかな候補は量的緩和(QE)であり、当局は先のリセッションを受け、第3弾までこの措置を講じた。パウエルFRB議長をはじめとする当局者は、債券購入が引き続き当局の危機対応の手段の1つであることを明確にしている。
しかし、債券購入は他に選択肢がなくなった場合にのみ活用すべきなのか、景気悪化のもっと早い段階で導入することが理にかなうのかという疑問がある。カイリー氏は18年の論文で債券購入について、「生産が潜在力を下回った段階で早急に活用」すれば最も効果的とした上で、FF金利がゼロまで引き下げられた後にだけ、二次的な措置であってよいと論じた。
サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は今月8日、記者団に対し、「金利を一次的な措置とし、バランスシートは二次的ながらもっとたやすく使う措置とした政策執行を想定することが可能だ」と指摘。「これはまだ決まっていないが、われわれの現在の議論の一部だ」と語った。
マイナス金利
米金融当局に利用可能な非伝統的選択肢は債券購入だけではない。技術的には金利をマイナス圏に引き下げることも可能だ。他の中央銀行による実施例もあるが、欧州が14年に採用した段階では、米景気は既に拡大基調にあった。
幾つかの大きなリスクを考慮して、米金融当局はマイナス金利を採用しない可能性がある。マイナス金利が海外でどの程度うまく機能してきたか、まだ結論は下されておらず、米ブラウン大学のゴーティ・エガートソン氏は実際、銀行の利益を圧迫することによって逆効果となりかねないと、最近の論文で指摘した。一方、サンフランシスコ連銀のバスコ・カーディア氏は今年の論文で、マイナス金利を採用していれば、先のリセッションはもっと痛手が小さく、回復も加速された可能性があると記しており、このトピックが引き続き当局者の間で議論されている可能性がある。
イールドカーブコントロール
米金融当局が頭の体操に取り上げるかもしれないもう1つの選択肢は、日本銀行が採用したイールドカーブコントロールだ。この政策では、市場操作を通じて短期金利と長期金利をコントロールすることができる。
米金融当局も第2次世界大戦の間を含め、イールドカーブコントロールを試したことがある。当時は、債券市場の安定化と戦費抑制のため、米財務省とFRBが長期債および短期債の利回りに上限を設ける枠組みを活用した。
日銀の雨宮正佳副総裁は17年、新たなイールドカーブコントロールはデフレ脱却のための新しい手段として運用するもので、政府のコスト削減に向けたものではなく、過去のものとは違うと説明した。
クラリダ氏がアドバイザーを務め、昨年公表されたコロンビア大学の分析論文では、米金融当局が採用した場合、金利の水準およびボラティリティーを押し下げることで、FF金利がゼロに達したとしても景気刺激が期待されるとする一方、当局のバランスシートを拡大させるリスクがあり、コミュニケーションや実施面でも困難が伴うかもしれないとしている。他方で、量的緩和を補完することができるという点に「主な魅力」があるという。
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