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概要:2011年10月に亡くなった米アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズ氏に哀悼の意と共に賛辞が世界中で広がっていた同月11日、クリエイティブテクノロジーのシム・ウォンホー会長兼最高経営責任者(CEO)はシンガポールの新聞に1万6000米ドル(約180万円)をかけ全面広告を打った。「グレートなレッスン」と「グレートな製品」に加え、「全世界」を垣間見せてくれたとして、ジョブズ氏に感謝をささげる広告だった。
2011年10月に亡くなった米アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズ氏に哀悼の意と共に賛辞が世界中で広がっていた同月11日、クリエイティブテクノロジーのシム・ウォンホー会長兼最高経営責任者(CEO)はシンガポールの新聞に1万6000米ドル(約180万円)をかけ全面広告を打った。「グレートなレッスン」と「グレートな製品」に加え、「全世界」を垣間見せてくれたとして、ジョブズ氏に感謝をささげる広告だった。
多くの新聞の読者は不思議に思ったかもしれない。4億台以上のパソコンでオーディオ用に使われていた「サウンド・ブラスター」カードで知られたシム氏は、音楽用のポータブルプレーヤーでジョブズ氏とライバル関係にあったからだ。06年には競争がエスカレートし、シム氏は「iPod(アイポッド)」が特許侵害だとしてアップルを提訴。ジョブズ氏との交渉は緊張をはらみ、同氏がほとんど1人で話していたとシム氏は振り返る。シム氏は結局、1億米ドルで和解。ジョブズ氏はその時の発表文で「クリエイティブは早期にこうした特許を得て極めて幸福だ」とコメントした。
だがその後、クリエイティブの衰退が始まった。アップルの驚異的な業績改善の一端を担ったのは2001年に発売されたアイポッドだ。1999年につくられたシム氏のMP3プレーヤーは事実上、世界市場で生き残ることができなかった。
クリエイティブの株価はシンガポール市場で2000年3月に上場来高値64シンガポール・ドルを記録したが、17年には1シンガポール・ドルまで落ち込んだ。07年には米ナスダック市場から自主的に撤退した。
だがシム氏は捲土(けんど)重来を期していた。1億米ドルを超える投資と何年もの取り組みを経て誕生したのが「スーパーX-Fi」だ。「ゲームチェンジャー」、つまり大変革をもたらす画期的な製品だと同氏は自負する。
クリエイティブが「ホログラフィックオーディオ」と呼ぶテクノロジーで、ヘッドホンそのものからではなく、離れた場所にある複数のスピーカーが発するようなサウンドを体験できるという。現在63歳のシム氏はインタビューで、「人生でこれほど興奮したことはなかった」と語った。
スーパーX-Fiのテクノロジーは米ラスベガスで毎年開催される家電見本市「CES」で18年の最優秀賞を受賞。このニュースとアナリストがポジティブな見方を示したことで、同社株は同年2月23日-3月5日の7営業日で7倍に値上がりした。
現在の株価はその時より下げているものの、17年時点で8000万シンガポール・ドル程度だった時価総額は、約3億6500万シンガポール・ドル(約300億円)で安定している。
マイケル・ジャクソン氏を迎えたシム氏(1989年)
出典:クリエイティブテクノロジー株式会社
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