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概要:米金利とドル相場の上昇を予想する声が、再び勢いを得ている。現実的と言えるだろうか?
2018年8月、トルコ・イスタンブールの街頭にある為替レートを示すボード。トルコなどの新興国では、自国の通貨が売り叩かれる中、中央銀行が通貨防衛のため不本意な利上げを迫られるケースも目立った。
REUTERS/Osman Orsal
債務負担という意味では債務返済比率(DSR)も重要な尺度だ。DSRは民間部門における債務返済額を分子、総可処分所得と利払い費用の和を分母として算出した比率である。
新興国に限らず多くの中央銀行は危機後に政策金利を引き下げ、危機前の水準にいまだに回復できていない(いわゆる正常化はできていない)。
だが、国際決済銀行(BIS)のデータによれば、DSRが2006年末対比で低下しているのは報告対象国32か国・地域のうち10か国だけである【図表3】(比較対象は2017年末時点)。
「ドル化した世界」である国際金融市場は、米金利とドル相場の上昇を乗り越えられるのか?
撮影:今村拓馬
だが、相場予想という観点から重要なことは、こうした国際金融情勢において「米金利とドルの継続的な上昇が持続できるか」という事実である。
もともと新興国は米金利上昇に伴い資本流出に見舞われやすいという体質にあって、2018年はその脆弱性が露呈した年だった。
上述してきたデータを見る限り、この背景には経済規模対比で累増している債務の存在があり、言ってみれば米金利上昇に神経質にならざるを得ない「ドル化した世界」があるのだと考えられる。
いくらアメリカの政治・経済情勢が盤石でも、多くの新興国は米金利の上下動に資本市場の未来を委ねており、程度の差こそあれ、経済・金融情勢がドル化している実態がある。
かかる状況下、新興国の資本コストがFRBの金融政策(政策金利)に規定されるという側面があり、それに起因する混乱をFRBが完全には無視しきれないという台所事情が推測される。
【図表4】に示されるように、金融危機後、ユーロや円を外貨として借り入れる動きはほとんど盛り上がらなかったのに対し、ドルは一方的に増加してきた。
「日米金利差の拡大なきところに円安は無い」とすれば、円安を予想するのは難しいのではないか?
REUTERS/Issei Kato
新興国市場が米金利の上昇を阻む環境がある限り、FRBがタカ派色を強めるにしても限界があるであろうし、同時に日米金利差の拡大も限定される。
巷の円安予想を見る限り、「日米金利差の拡大なきところに円安は無い」というロジックが大半であるのだから、自ずと円安予想はやはり困難なのではないか。控えめに言ってもドル/円相場の先行きは「横ばい」か「円高」かに賭けるのが無難という印象である。
誤解のないように言っておきたいが、かつてのような80円台や70円台という超円高を想定すべきだという話ではない。それを実現するには、近年の日本企業による円の売り切り(≒海外企業買収)はあまりにも大きいという印象がある。
この点は別途大きな論点なので割愛するが、寄稿『「円」はなぜ安全資産と呼ばれるのか —— 日本が持つ世界最大の対外資産とは』でも論じたように、今や日本企業の海外企業買収は対外純資産の構造自体を変容させるほどの規模に至っている。それは立派な円の売り切りであり、円高を抑止する材料である。
だが、そうした論点はあくまで「水準感」の議論であって、「方向感」に関わる議論とは別だ。
「方向感」については、これまで見てきたようにアメリカの国内外の経済・金融環境が米金利上昇を阻むと思われることから、日米金利差の拡大も進まず、それゆえに円安方向への動きも限定されると考えておきたい。
※寄稿は個人的見解であり、所属組織とは無関係です。
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唐鎌大輔:慶應義塾大学卒業後、日本貿易振興機構、日本経済研究センターを経て欧州委員会経済金融総局に出向。2008年10月からみずほコーポレート銀行(現・みずほ銀行)国際為替部でチーフマーケット・エコノミストを務める。
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