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概要:ラジオが岐路に立っている。スマートフォンの普及などメディア環境が多様化する中で、主な収益源である広告費が低迷。既存設備を維持・更新するコストの増加にも直面し、明るい展望が描けない。北海道ではコミュニティFMと連携し、経営資源を相互に活用する新たな取り組みが始まった。新たなビジネスモデルを模索する動きが続いている。 <差がなくなるAMとFM> 「ラジオは寄り添いのメディアと言われている。テレビは『お茶の間の皆様』だが、ラジオは『ラジ
[東京 27日 ロイター] - ラジオが岐路に立っている。スマートフォンの普及などメディア環境が多様化する中で、主な収益源である広告費が低迷。既存設備を維持・更新するコストの増加にも直面し、明るい展望が描けない。北海道ではコミュニティFMと連携し、経営資源を相互に活用する新たな取り組みが始まった。新たなビジネスモデルを模索する動きが続いている。
<差がなくなるAMとFM>
「ラジオは寄り添いのメディアと言われている。テレビは『お茶の間の皆様』だが、ラジオは『ラジオの前のあなた』。一人称で問いかけるメディアはラジオしかない」──。
コミュニティメディア論などを専門とする大正大学地域創生学部の北郷裕美教授はこう述べ、リスナーがつながりを感じやすいラジオには「将来性がある」との見方を示した。
一般的にFMは音質の良さから音楽番組、AMはトーク番組に向いていると言われているが、インターネットの普及で状況は変わりつつある。音楽配信アプリで気軽に音楽が楽しめるようになった現在は、FMも音楽だけで勝負する時代は終わった。
さらにAM放送は、難聴対策や災害対策を目的にFM波でも同じ番組を放送しており(ワイドFM)、今や両者の差はほとんどない。AM、FMともにあらためて「番組力」が問われる時代になった。
27日に開かれた放送事業の基盤強化に向けた有識者会議で、ローカルファースト研究所の関幸子代表は「FM局、AM局の制度を維持するという視点ではなく、消費者に対してラジオをどのように継続できるのか、という視点で判断する時期に来ている」と語った。
民放連研究所の調査によると、昨年9月に発生した北海道胆振東部地震で最も役立った情報源は、ラジオだった。1991年度のピーク時に2040億円あったAM局の営業収入は2017年度に797億円まで減少した。この26年で約6割減った計算だ。
ラジオ局の自助努力もさることながら、災害時に国民のライフラインにもなるラジオをどう維持していくか、制度面でも考える時期に来ている。
民放連は27日の会議で、AM放送を設備の維持コストが安いFM放送に乗り換えることができるよう、総務省に制度改正を要望した[nL3N21E0YJ]。
<コミュニティFMとの連携>
そうした中、既存のAMラジオ局で新たな取り組みも始まった。HBC北海道放送と北海道のコミュニティFM23社が加盟する日本コミュニティ放送協会北海道地区協議会は2018年9月1日、「放送事業等に関する連携協定」を締結した。
地域情報・気象情報の相互共有や災害時の相互協力、パーソナリティの相互出演などの連携を図っていく。
この連携を受け、HBCラジオは昨年10月から、帯番組の中で週1回、連携先のコミュニティFMが発信する情報を伝えるコーナーをスタート。4月からは連携をさらに拡大する。
HBC北海道放送ラジオ局編成業務部の角田拡樹部長は「これまで地域の情報を細かく伝えることができなかったが、一緒にやることで補完できる」と説明した。
行政や観光、交通情報など地域情報を提供する地域密着型メディアであるコミュニティFMと道内全域をカバーするHBCラジオの提携は、ネット時代における新しいビジネスモデルの模索とも言える。
大正大学の北郷教授は「ラジオは本来、コミュニティーメディアだ」と指摘、連携強化は県域ラジオが進むべき方向の1つとの見方を示した。
TBSラジオの入江清彦会長は、27日の会議で「われわれが決して忘れてはいけないことは、民放ラジオは地域に根差し、地域住民の知る権利に応え、災害時には安全・安心のための災害放送に全力を挙げることだ」と強調した。
インターネット配信サービス「radiko(ラジコ)」の活用など、IT技術も活用しながら生き残りをかけているラジオ。
一方、音声市場全体をみると、ビジネスの専門家やミュージシャン、インフルエンサーなどの「声のブログ」を提供するベンチャー企業「Voicy」(東京都渋谷区)が急成長するなど、競争は厳しさを増す一方だ。
AM局がFM局へのシフトを志向するのも、高コストのAM設備維持費を低コストのFM設備に切り替えたいというのが本音だ。
ただ、三菱総合研究所の調査によると、ワイドFMに対応したラジオの普及率は現在53%にとどまっている。対応ラジオが増えなければ、収入の大半を占める広告費がさらに減少する可能性があり、「縮小均衡」の動きが一段と加速しかねない。
深夜放送で輝きを放っていた1960─70年代のAMラジオ。果たしてラジオ各社は、その勢いを取り戻すことができるのか──。
*写真を追加しました。
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