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概要:新入社員が知っておくべきビジネスの基本、クックパッドとネットフリックスをあなたは説明できるか?
REUTERS/Lucy Nicholson
【新入社員の皆さんへ】Q. メディア企業(個人課金モデル)の主要KPIは?
A. 個人課金モデルの場合、 売上 = ユーザー数 * ARPU この式がビジネスの一番の基本となります。ARPU(アープ)は、「Average Revenue Per User」=ユーザー1人当たりの平均売上のことです。この三つの主要KPIから何が分かるのかは後述します。
今回は、既存の読者の方にとっては、これまでの復習編となりますが、新入社員であっても理解しておくべき「ビジネスの型」について書いてみたいと思います。
前回の新入社員向けのコンテンツでも書きましたが、私が起業する前、会社員だった頃に新入社員のメンバーによく言っていたことはこのような内容です。
新入社員の皆さんは研修が終わるとビジネスの現場に配属されます。そうするとしばらくの間は、日々、目の前の仕事をこなすことが一番のプライオリティになると思います。
そのような状況では、会社全体のビジネスモデルや、自分たちの業界のトレンドなどは自分の仕事と直接関係ないように思えてしまうかもしれません。皆さんの日々の現場での仕事が「ミクロ」だとすれば、会社全体のビジネスモデルや業界トレンドというのは「マクロ」です。
もし皆さんが本当に優れたビジネスパーソンになりたいのであれば、「ミクロ」と「マクロ」の両方を理解して、それらをつなげることができるようになる必要があります。
日々の仕事は毎日忙しいと思いますが、会社全体のビジネスのことや業界トレンドのこともしっかり勉強する時間を作っていくことが、皆さんのキャリア構築に大きく貢献するはずです。
新入社員向けに書きますが、中途入社の方や人事異動でこれまでと違うビジネスの担当になった方にも役立つ内容なのではないかと思います。
これまでも私の記事を読んでくださっている既存読者の方は、是非皆さんの会社の新入社員の方にこの記事を転送してみてください 。
メディア企業(個人課金モデル)の型
今回は、メディア企業の中でも「個人課金モデルのビジネスの型」について書いてみたいと思います。
これは私の本からの抜粋です。前述の通り、個人課金ビジネスで押さえておくべき KPI はここに書いてある三つ(売上、ユーザー数、ARPU)になります。
決算を読むときは、この三つの KPI を因数分解し、それぞれの指標が過去と比べてどのように推移していているのか?、また競合他社と比べてどのように優れているのか?、ということを読み解けば大まかな構造が分かります。
理屈は非常にシンプルなのですが、実際に決算資料を見たことないという方も多いかと思いますので、そういった方のために、入門編ではありますが実際の決算資料のどこをどのように見ているのか、ということを実例で示してみたいと思います。
今回は、個人課金モデルのビジネスの中でもクックパッドとNetflixの2社を題材として、実際に最新の決算資料のどこを、どのように読めば良いのか?ということを簡単に解説したいと思います。
クックパッド
クックパッドは、日本で個人課金ビジネスのパイオニアとも言える存在ではないかと思います。
以前は、個人課金と広告のハイブリッド型のビジネスを展開していましたが、数年前に経営体制が変わってから、より個人課金のビジネスにフォーカスするようになってきた印象があるので、今回取り上げてみたいと思います。
*クックパッド株式会社 2018年12月期決算説明会資料(2019/2/12)
はじめに、課金ユーザーだけではなく全体のユーザー数の推移を見てみます。すると1か月当たり国内だけで5462万人ものユーザーが使っているサービスということが分かります。現状の数字を把握したら、次に前年同期の数字に着目します。
すると前年同期は会員数5665万人だったので、今年は約200万人減と、若干減少していることが分かります。
プレミアム会員(有料会員・課金をしているユーザー)は約205万人で、1年前と比べると約9万人ほど増えていることになります。
全体のユーザーが約5460万人で、課金ユーザーが約205万人なので、ユーザー全体の約3.75%が課金ユーザーということになります。
全体のユーザー数、課金しているユーザー数、そして課金ユーザーの割合を把握したら、次に着目するのは売上です。決算資料の中にあるこの図によると、個人課金ビジネスの売上は全体で21億円で、前年同期比で微増となっています。この決算資料に記載されている21億円というの売上の数字は、四半期=3カ月の売上です。つまり1カ月あたりの売上は約7億円となります。このひと月あたりの売上を課金ユーザー数で割ると、1ユーザーあたりの月間売上が約343円ということが分かります。
つまり、クックパッド の個人課金ビジネスを分解すると、
・利用者数が月間5,462万人いて、・そのうち、課金ユーザー数が205万人(約3.75%)いて、・1ユーザーあたり月に343円ずつ課金売上が上がるので、・月間の課金売上が7億円になる
というビジネスだと言えます 。
少し話がズレますが、全ての課金ビジネスの決算説明会資料に同じ項目が記載されているとは限りません。
企業によっては会員数は記載されていても、有料会員数は記載されていないとか、年間の有料会員数は記載されていても、四半期毎の数字は公表していない、など企業毎に特徴があります。
決算説明会の資料は、決算短信とは異なり、記載項目に明確なルールが制定されていないので、企業がより自社のビジネスを投資家に理解してもらいやすいように作られています。(さらに補足すると、決算説明会の開催自体に法的な規制がないので、四半期毎に開催せずに半期や1年に1回しか開催しない会社もあります。)
Netflix
次に Netflix も見てみましょう。
*Netflix 2018 Fourth Quarter Earnings: Letter to Shareholders(2019/1/17)
Netflix は無料のお試し期間などを除くと原則有料のサービスです。グローバルで課金ユーザー数が1億3926万人もいます。そして課金ユーザー数は前年同期比+25.9%と驚異的なスピードで成長しています。
四半期あたりの売上は$約4.2B(約4200億円)で、こちらも前年同期比+27.4%と高成長が続いています。 単純に割り算をすると、1ユーザーあたりの月間売上は10ドル(約1千円)という計算になります 。
つまりNetflixのビジネスというのは、
・課金ユーザー数が約1.4億人、・1ユーザーあたり月に$10(約千円)ずつ課金売上が上がるので、・月間の課金売上が$1.4B(約1,400億円)になる
というビジネスだと言えます。
クックパッドと比べると、Netflixはグローバルに展開しているサービスだけあって課金ユーザー数が圧倒的に違いますし、サービスの性質上1ユーザーあたりの月間課金額が3倍程度違うのも見て取れます。
以上、今回はメディア企業の中でも個人課金ビジネスを展開している会社で、代表的な2社を取り上げました 。
このように、同じ個人課金型のビジネスでも、売上やユーザー数、ARPUを比較することで、ビジネスの規模や、サービスに対してユーザーの支払う金額の違いが理解できます。
個人課金ビジネスは色々な会社が提供しているビジネスでもありますので、是非他の会社とも皆さん自身で比べてみてください 。
一つ注意していただきたいのは、売上やARPUは主要なKPIではありますが、金額が高いからといって一概に良いビジネスであるとは必ずしも言えません。
今回は初級編なので深くは説明しませんが、前年同期と比較して成長率を見たり、個人課金ビジネスの中でもより近いサービスを提供する他社との比較を行ったり、市場規模の推移との比較を行ったりと、いろいろな視点でビジネスを読み解き、その企業が提供するサービスの市場がどう推移すると予測して自社を成長させるための戦略を考え、その戦略を実行するためにどのような投資をしているのか?、そもそも投資に耐えられる財政状況なのか?など、「ミクロ」と「マクロ」の両方の側からそのビジネスを見て判断することが大切です。
このような多様な視点から考えることが、ミクロとマクロを繋いで考えられるようになるトレーニングの第一歩となるでしょう。
シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中
決算が読めるようになるノートより転載(2019年4月9日公開の記事)免責事項:
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