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概要:ソニーの経営方針説明会は、異例ともいえる大きな「発表」があった。次世代プレイステーションの性能を感じさせるデモ、そして渦中のファーウェイ問題についての考え方だ。ソニー吉田社長の発言を分析する。
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ソニー
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5月21日、ソニーは経営方針を説明する「IR Day」を開催した。開催にあわせ、記者・証券アナリスト向けに説明会も行われ、吉田憲一郎社長が、今後の経営方針について解説した。
ソニーは5月17日に、クラウドゲーミングやAIについて、マイクロソフトとの戦略的な提携を発表している。2019年度の経営方針説明会では、特にエンターテインメント事業への注力が語られたこともあり、マイクロソフトとの提携に至った背景や、2020年以降に発売すると見られる「次世代プレイステーション」の概要、イメージセンサー事業の可能性などを中心に解説が行われた。
渦中のファーウェイ問題は「ノーコメント」
ゲームと並び、ソニーの屋台骨を支えているのは、スマートフォン向けのイメージセンサーだ。
ハイエンドスマートフォンに搭載されるカメラの数の増加などの追い風を受け、ソニーとしては、1兆円を予定していた半導体への投資を、最大1.2兆円まで積み増す計画を立てている。
そこで気になるのは、いま世の中の注目が集まっている「ファーウェイ問題」だ。
米商務省が5月15日にファーウェイとその関連企業に対して、アメリカ企業による製品およびサービスの提供を規制することを決めた結果、ファーウェイのスマートフォン事業が減速する可能性が出てきた。
Business Insider Japanも参加した5月18日のファーウェイ・任正非CEOのインタビュー。今年の見通しとして、減速するとみており、通年で20%増には届かないだろうとコメントしている。
写真:浜田敬子
ソニーはファーウェイのハイエンドスマホにイメージセンサーを提供しており、事業への影響が懸念される。
「アメリカ向け売り上げは23%、中国向けが9%あり、両国とも重要な市場」と吉田社長は言う。だが、「取引先・規制・政策などについて、個別のコメントは差し控える」と答えるにとどまり、「ファーウェイ・リスク」についてはノーコメントを貫いた。
ソニーの吉田憲一郎社長。
写真:西田宗千佳
これは筆者の予想だが、ソニーは確かに影響を被るだろう。だが、その規模はそこまで大きくない可能性もある。
ファーウェイ製スマホは中国国内向けの比率も高く、ここにはアメリカの動向は影響しない。今後出荷される製品のうち、ヨーロッパ・インド・日本・東南アジアなどに向けた製品の場合、グーグルのサ−ビスが使えないことが影響を与える可能性はある。ただ、それはソニーにとっては売り上げの数%程度、と考えられる。
そこで仮にファーウェイがシェアを落としたとしても、他社がその領域を占めるのであれば、ハイエンドスマホ向けセンサーを寡占するソニーとしては影響が小さい……という分析も成り立つ。
ただし、ファーウェイ・リスクがスマートフォン市場全体の減速を招いた場合、当然ソニーも影響を受けることになる。当面注視が必要だ。
一方で、吉田社長は、イメージセンサー事業についてこうも説明する。
「今後、AIを組み込んだエッジコンピューティング向けセンサーが増える。弊社のイメージセンサーは積層であるため、そこにロジックを組み込める。マイクロソフトとの協業はこの分野にも関わる。自社の強みの周りに仲間を作っていきたい」(吉田社長)
積層である強みを活かし、イメージセンサーにAIを搭載。そこではマイクロソフトとの協業関係も活用する。
イメージセンサーのような事業は、いかに先を読んで技術開発と投資を続けるかが重要な領域。この分野では、スマートフォン向けの先にある部分を、長期的視点で準備を進めていく考えだ。
ソニー成長の源泉は「ゲーム」、異例の次世代機公開も
ソニーの事業の考え方。エンターテインメント・エレクトロニクス・DTCという3分野で収益を拡大する。
ソニーは2018年、吉田憲一郎氏が社長に就任した際、「人に近づく」ことを経営方針に据えた。「今年もそれを強化する」(吉田社長)という方向性に変わりはない。
特に注力することを表明したのが、同社が「DTC(Direct to Consumer)」サービスと呼ぶビジネス群だ。
DTCとは顧客と直接かかわるビジネスのことで、その中核を担うのがゲーム事業だ。2018年度は売上高2兆3109億円、営業利益3111億円と、ソニーの事業セグメントとしては過去最高の成績を残している。この好調さをいかに今後も維持するかが、ソニーにとっては大きな課題だ。
「PlayStation 4」(PS4)は2019年度中に、累計販売台数1億台に到達する見込みで、そこに付随するPlayStation Network(PSN)の売り上げの維持・拡大もテーマだ。
ゲーム事業は絶好調。PS4は2019年度内に累計販売台数1億台突破が確実な見通しだ。
そこで、ゲームに関するキーワードとして挙げたのが「没入感(Immersive)」と「いつでもどこでも(Seamless)」という要素だ。
ソニーのこれからのゲームビジョンは「没入感(Immersive)」と「いつでもどこでも(Seamless)」。
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「没入感」とは、まさにゲームにのめり込む、集中できる感覚のこと。「現在開発中の次世代コンソールでも、没入感重視の方針は変わらない」と吉田社長はいう。
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ここで吉田社長は、「デモビデオの披露」という形で、次世代プレイステーションの性能をアピールした。これまで、新型機のお披露目はあくまで「ゲーム機のお披露目イベント」として行うものであり、ソニーの経営方針説明会で情報公開が行われることはなかった。それだけ同社が、「次のプレイステーション」に賭けている、ということなのだろう。
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公開されたデモビデオは、PS4向けのゲームソフト「スパイダーマン」のデータを使ったものだ。PS4の上位機種である「PlayStation 4 Pro」では、ゲームデータをハードディスクに蓄積している都合上、どうしても読み込みに時間がかかる。
だが「次世代機」では、フラッシュメモリーを使ったSSDを採用、特殊な機構によりデータ読み込みを劇的に高速化する。
デモ映像では、PS4 Proでは8.1秒かかっていた読み込みが0.8秒で終わり、一瞬で画面が出てくる様子が示された。これは、ゲームにつきものの「読み込み待ち」を解消し、ゲーム内で使うデータ規模の制限を緩和することに大きな役割を果たす。要は、よりゲームに没入しやすくなるのだ。
ソニーの「IR Day」資料より抜粋。次世代プレイステーションではゲームの読み込み速度が劇的に向上。よりゲームに没入できるようになる。
マイクロソフトとクラウドゲームで組む理由
ただし、没入だけでは顧客層拡大は難しい。いつでもどこでも、自分が望む時にゲームができる環境があることが重要だ。これが「いつでもどこでも(Seamless)」だ。
「ユーザーの回線やスマートフォンの性能向上により、シームレスな体験が現実的になってきた」と吉田社長は言う。
これからのプレイステーションではシームレスな体験を重視する。
現在、シームレスなゲーム体験という意味で注目されているのが「クラウドゲーミング」だ。サーバー上にゲームハードウェアを置き、ネットワークを介して使うことで、手元にゲーム機がなくても、スマホやPC、テレビなどで楽しむことができる。3月にグーグルが「Stadia」(ステーディア)というクラウドゲーミング・ビジネスの計画を発表したことから、一躍注目が集まっている。
ソニーは2014年より、クラウドゲーミングサービス「PlayStation Now」を展開中で、実はこの分野では先行している。吉田社長は「5年間で技術開発と知財の蓄積も得られたし、経験からの学びは多い」とその成果を語る。
一方で、次の世代は「ディスク+ダウンロード」から「ディスク+ダウンロード+ストリーミング」の時代になり、消費者側での選択肢はより広いものになる。
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5月17日、ソニーはマイクロソフトとの間で、「ゲームやコンテンツのストリーミングサービスに対するマイクロソフトのクラウドサービスの利用」について、検討を開始する覚書を締結している。これも、今後を見据えてのものだ。
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5月17日、マイクロソフトと提携。ゲーム向けストリーミングサービスなどについて覚書が締結された。
「マイクロソフトとは今後、ストリーミングのソリューションの面で共同してやっていく。幅広く真摯に協議を重ねる予定」(吉田社長)と、提携への本気度を語る。
ただしソニーは、一足飛びに「ゲーム機」が不要になる未来を描いているわけではない。
「長い目で見れば、クラウド化やストリーミングの流れが来る。ただし、時間軸の想定が難しい。いまだ技術的には難しい側面もある。ストリーミングを事業として成り立たせるために、どういう形がいいのか。長時間プレイが前提のゲームで、本当に『遊び放題』のメリットを感じていただけるかも検討の余地がある」(吉田社長)
「我々はImmersiveを大事にしたい。ゲーム市場全体を見ると、コンソールはややニッチなマーケット。だが我々はコアゲーマーの方々の体験を大事にしたいと考えている。そうすると、ゲーマーのみなさんの近くにゲーム機があることが、今はベスト。ただし、世の中は次第に変わっていく」(同)
吉田社長は、オンラインサービスのPlayStation Nowから得た知見を踏まえてそう説明する。次世代に必須だが、いまだ残る課題は多く、その解決の一助としてマイクロソフトとの提携を選んだ、ということのようだ。
なお、PS4については、自宅にあるPS4自体がサーバーになり、スマホやPCなどでゲームができる「リモートプレイ」という機能もある。こちらは次世代機でも搭載され、手軽な「いつでもどこでも」を実現する技術として使われる予定だという。
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(文・西田宗千佳)
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