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概要:伝統を重んじがちな日本だが、金融政策に関しては極めて非伝統的だ。第二次世界大戦後の時代においてデフレと長引く低成長に真っ先に見舞われた経済大国である日本の金融当局は、創造的にならざるを得なかった。日本銀行は世界で初めてゼロ金利政策を導入、さらに2001年には量的緩和(QE)に踏み込んだ。現在、日銀はまたしても、特定の金利を押し上げるという新たな実験に取り組んでいる。
伝統を重んじがちな日本だが、金融政策に関しては極めて非伝統的だ。第二次世界大戦後の時代においてデフレと長引く低成長に真っ先に見舞われた経済大国である日本の金融当局は、創造的にならざるを得なかった。日本銀行は世界で初めてゼロ金利政策を導入、さらに2001年には量的緩和(QE)に踏み込んだ。現在、日銀はまたしても、特定の金利を押し上げるという新たな実験に取り組んでいる。
長短双方の金利押し下げで成長促進を図る長年の取り組み後、日銀はここ数週間、超長期の国債利回りを押し上げようとしている。通常なら、こうした措置は金融引き締めとなるかもしれない。しかし、黒田東彦総裁は繰り返し、日銀は強い金融緩和モードにあると強調。先月も、必要ならば、「ちゅうちょなく、追加的な金融緩和措置を講じる」と表明した。日銀は10月31日の次回政策決定日に現行マイナス0.1%の短期政策金利を引き下げると、多くのエコノミストが予想している。
黒田総裁は最近、超長期債利回りの過度な低下は経済に悪影響を与えると警告した。9月19日の記者会見では、超長期の金利が下がり過ぎると「消費者のマインドに影響する」と指摘した。低利回りはある意味で、心理的なダメージを与える。低成長が長引くとの見通しを強め、家計に支出よりも貯蓄を促すからだ。極端に低い利回りは、4000万人に上る日本の年金受給者にとって本物の脅威だ。
黒田東彦総裁
こうした総裁の発言後、日銀は債券購入を減らしている。ブルームバーグ・エコノミクスの計算によれば、このペースでいくと来年には年間5兆円程度の増加ペースと、当初目標の80兆円から減額されている。最新の計画で日銀は、残存期間25年超について購入をやめる可能性も示唆した。
ハーバード大学ケネディスクールの上級研究員で日本で30年にわたりエコノミストを務めた経験を持つポール・シェアード氏は、日銀は矛盾したことを望んでいると指摘する。短・中期の金利を押し下げることで景気を支援すると同時に、超長期の利回りには成長とインフレが高まるという日銀の描く未来が反映されるようき期待しているからだ。
長期にわたる金融緩和へのコミットメントを市場と国民に納得してもらうため、日銀はバランスシート拡大を続けると表明し、主に債券購入を通じて実施してきた。従って、一部の債券の利回りを押し上げるために購入をやめるなら、その他の部分で債券をもっと買わなければならない。「もぐらたたきのようなものだ」とシェアード氏は指摘し、国債買い入れのオペ運営方針を日銀が変更し続ける必要性に言及した。
ソニーファイナンシャルホールディングスのエコノミスト、菅野雅明氏は、短期金利を下げる一方で長期金利を押し上げるというのは非常に難しいだろうと述べた。その上で、日銀が年金基金や生命保険会社のことを考えなければならないのは明らかだとし、日本は急速に高齢化が進んでいると指摘した。
20年物の日本国債利回りが9月前半にわずか0.02%に落ち込んだことが、日銀の最新の動きを促した。黒田総裁が警鐘を鳴らし日銀が買いオペの方針を調整すると、今月8日までには0.20%に上昇。これまでの影響を測るのは難しいが、菅野氏は日銀がさらに強力な措置を取る可能性はあるとみている。
考えられる方法の1つは、20年物国債利回りの目標を設定しそれを達成できるように購入を停止することだ。さらに過激な方法は日銀が20年債を売ることだが、その場合、金融緩和モードの中でなぜバランスシートを縮小させるのかを説明するのに日銀は苦戦するだろう。
日銀は既に日本国債市場全体の43%以上を保有済みで、こうした措置の実施は簡単ではない。日銀のバランスシートは国内総生産(GDP)の規模を超えている。この比率は米国と欧州では、それぞれ18%と39%だ。
ベテラン債券トレーダーで現在は野村証券で資産運用会社向けの投資商品を手掛ける菊川匡氏は、日本の金融機関はある意味で国債市場から締め出された格好だが、利回りが上昇すれば喜んで戻ってくるだろうと予想する。
同氏によれば、結局のところ超長期債の利回りを確実に押し上げる唯一の方法は短期の政策金利引き上げだが、これは円相場を上昇させるリスクがある。円高は輸出企業の競争力を弱めるほか、海外売上高が大きい日本の優良企業の株価を押し下げる。
長期金利押し上げという実験に踏み出した初の中銀も日銀だ。日本の機関投資家は世界で最も長期にわたって異例に低い債券利回りにさらされている。ドイツの10年債利回りは14年に1%を下回った。日独ともに現在はマイナス圏だ。米国債利回りも歴史的低水準にあり、景気減速や追加利下げの可能性もあり、さらに低くなるかもしれない。
そのほかにも日本の実験に注目する中銀はあるだろう。オーストラリア準備銀行のロウ総裁は利下げが預金者に痛みをもたらすことに言及した。10年物豪州債も今年、利回りが1%未満の仲間に加わった。
菅野氏は日本の問題は今のところ日本に特有なものの、低金利が長期化すれば米国や他の国にも深刻な問題になるだろうとし、国債のような安全資産から金利収入が期待できない中でどう生きるかといった問題に世界経済は直面していると指摘した。
日銀が新たな試みで成功する確率がどれだけあるにせよ、今は試すべき時だと菅野氏はみる。今は日本も世界経済もリセッション(景気後退)に陥ってはおらず、雇用も堅調だからだ。今後経済状況が悪化する可能性は十分あり、後で振り返れば、あの時は良かったということになるかもしれないという。
(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)
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