简体中文
繁體中文
English
Pусский
日本語
ภาษาไทย
Tiếng Việt
Bahasa Indonesia
Español
हिन्दी
Filippiiniläinen
Français
Deutsch
Português
Türkçe
한국어
العربية
概要:日銀が2月の国内企業物価指数を発表し、インフレ圧力が「まだ残っている」現状が確認されました。資源価格は落ち着きを取り戻し、政府の負担軽減策も導入され、本来であれば企業物価ははっきり低下しそうですが、なぜなのでしょう。
「円安のメリットを最大限活かす」などと謳った岸田首相だが、2022年の記録的円安の「爪痕」が今日もなお日本経済の足かせであり続けている実情が各種統計から読み取れる。
Yoshikazu Tsuno/Pool via REUTERS
シリコンバレー銀行とシグネチャー銀行の突然の破綻をめぐる混乱はまだ続いているものの、米金融当局が両行の預金を全額保護する措置を早々に発表したことで、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ抑制のための利上げを停止する可能性は消えたというのが筆者の基本認識だ。
とは言え、時々刻々と新たな情報が加わっており、シナリオはあくまで可変的であることに留意されたい。
もっと知る
記録的円安は繰り返されるのか。史上最大「ほぼ2兆円」単月経常赤字が教えてくれる日本の現在地
さて、問題のインフレの推移だが、いち早く上昇が始まった欧米についてはピークアウトが鮮明になってきた一方、日本では依然加速が続いている。
日銀が3月10日に発表した2月の国内企業物価指数(PPI)からは、インフレ圧力がいまだに残っている実情が確認された。
前月比では0.4%低下と2020年11月以来のマイナスを記録したものの、前年同月比では8.2%上昇と引き続き大幅な伸びが続いた。2022年12月は同10.5%上昇、1月は同9.5%上昇だったので、プラス幅の縮小に注目すると、インフレ抑制は確かに進んでいるように見える。
しかし、2月のPPIが鈍化した背景には、同月から始まった政府による電気・ガス代負担軽減策の効果がある。例えば、電力・都市ガス・水道の寄与度は前月比マイナス0.52%と、全体のマイナス幅(0.4%低下)を上回る。
また、原油価格の落ち着きも見られ(ただし顕著に下落したわけではない)、石油・石炭製品の寄与度は前月比マイナス0.10%だった。
このほか、木材・木製品の寄与度も前月比マイナス0.02%を記録したが、これらのマイナス寄与となった3類別(電力・都市ガス・水道、石油・石炭製品、木材・木製品)を仮に無視すると、PPIは前月比0.2%上昇という結果になる。
企業の間で取引されるモノについては、物価上昇の主役が「エネルギー以外」に移っている状況を読み取れる。
家庭で消費されるモノやサービスの価格動向を示す消費者物価指数(CPI)についても、2月以降は電気・ガス代負担軽減策の効果が出てきて、ピークアウトがはっきりしてくることが予想される。
下の【図表1】を見ると分かるように、企業物価と消費者物価の差は詰まり始めており、企業間取引の段階でのコスト高が末端の消費段階に降り始めている(価格転嫁が進んでいる)のが現状と見受けられる。
【図表1】消費者物価指数(CPI、青)と企業物価指数(PPI、橙)の推移。
出所:Macrobond資料より筆者作成
名目賃金上昇への期待が例年になく高まる中で、こうした動きが持続するのかどうかに注目したい。
もっと知る
日銀・植田新体制を理解するための「4つの論点」。では、黒田体制とは何だったのか…
資源高が落ち着いても円安の「爪痕」が……
2月の輸入物価指数にも目を向けておくと、契約通貨ベースの伸びは前年同月比3.1%上昇と、およそ2年ぶりの低水準にまで鈍化した。資源高を受けたインフレの影響がようやく収束してきた様子が見て取れる。
しかし、円ベースで見ると前年同月比14.6%上昇で、依然として2ケタを超える大幅な伸びが続いている【図表2】。
【図表2】輸入物価指数の前年比変化率の推移。円建て(赤)と契約通貨建て(紫)。
出所:日本銀行資料より筆者作成
家計や企業が体感する輸入物価は契約通貨ベースより圧倒的に円ベースに近いので、その意味では、2022年から社会問題化しているコストプッシュ型のインフレは、今なお日本経済の直面する大きな課題であることに変わりない。
現実問題として、資源高が落ち着いても、円安が残っている(3月は1ドル135円前後で推移)せいで、より高いコストを輸入財に支払う必要がある状況が続く。
それは交易損失の拡大、ひいては実質国内総所得(GDI)の悪化を通じて、日本経済から消費・投資意欲を奪っている現状と重なる【図表3】。
【図表3】実質国内総生産(GDP)、実質国内総所得(GDI)、交易条件の推移。
出所:内閣府資料より筆者作成
日銀・植田新体制はどう動くか
前節で見たように、円安は2022年10月に1ドル152円付近まで進んでピークアウトしたものの、その爪痕(つめあと)は物価統計やGDP統計にはっきりと残っている。
こうした状況に対し、植田新体制の日銀がどういった挙動を示すかは想像に難くない。
植田新体制は「物価上昇が原因で、景気回復が結果」という倒錯したリフレ思想に侵されておらず、実質GDIの悪化や交易損失の拡大といった実体経済の現状を冷静に分析した上で、過度に引き締め的な政策運営は避けるだろう。
裏を返せば、本稿で触れたような各種の物価指標が上振れし、高止まりを続け、金融政策の正常化を期待する(あるいは催促する)声が高まっても、植田新体制がそうした外野の意見に取り合うことはないと考えられる。
Advertisement
免責事項:
このコンテンツの見解は筆者個人的な見解を示すものに過ぎず、当社の投資アドバイスではありません。当サイトは、記事情報の正確性、完全性、適時性を保証するものではなく、情報の使用または関連コンテンツにより生じた、いかなる損失に対しても責任は負いません。