「ブラックスワン」ファンドに好機到来－破滅へのヘッジに需要拡大

テールリスクへのヘッジとなる「ブラックスワン」ファンドは長年、市場の崩壊を待っていたが、わずかな破滅の気配だけでも、こうしたファンドのパフォーマンスを改善させるのに十分であることが分かった。

オプションを活用しボラティリティーの急上昇から利益を得る戦略のファンドは３月、いたって好調だ。Ｓ＆Ｐ500種株価指数は小動きだが、広く保有されている銀行株は急落。市場全体の混乱でブラックスワンファンドに大きな利益が出るとの期待が高まっている。

アクティブ運用のテールリスク上場投資信託（ＥＴＦ）は銀行危機が深まる中で月初から約４％上昇。このまま月を終えれば、新型コロナウイルス禍初期の2020年３月以降で２番目の好成績となる。

先週の終盤にはＳ＆Ｐ500種株価指数が小幅上昇、ＣＢＯＥボラティリティー指数（ＶＩＸ）も低下し金融市場には幾分落ち着きが戻ったが、投資家は神経質なままだ。世界の当局は金融安定について市場の懸念を払拭（ふっしょく）しようとしているが、多数の金融機関への信頼感も低下している。

ドイツ銀行のデフォルト（債務不履行）に備える保証料は24日に上昇し、ユーロ建て優先債のクレジット・デフォルト・スワップ（ＣＤＳ）は取引が開始された2019年以降で最高の水準に達した。株価は急落し、他の欧州銀も売りを浴びた。

ドイツ銀の株価急落、一時15％安－欧州銀行業界への不安再燃 (3)

アンブラス・グループの共同最高投資責任者（ＣＩＯ）、クリス・シディアル氏は「潜在的な投資家はある種の感染が起こって自分たちのポートフォリオが破壊されることを懸念している」と話す。同氏のテールリスクファンドは先週、ＶＩＸが一時30を超える中で７％上昇した。

弱点を見つけて封じ込めることが可能だと考えている投資家は不意を突かれるかもしれない。世界の中央銀行はシステムへの信頼を支えるため迅速に行動したが、米連邦準備制度理事会（ＦＲＢ）のパウエル議長ですら、過去３週間の混乱の後、リスクが去ったと考えるのは時期尚早だと述べている。

サスケハナ・インターナショナル・グループのデリバティブ戦略共同責任者、クリス・マーフィー氏は「テールリスクへのヘッジが増えている。銀行混乱が始まって以来、ＶＩＸのコールの買いが続いている」と話した。