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概要:米株式市場では、S&P総合500種が8日の値上がりによって昨年10月12日に付けた終値ベースの直近安値からの上昇率が20%に達した。複数の市場参加者の話では、これは少なくとも数字上で、新たな強気相場の始まりを予告している。
[ニューヨーク 8日 ロイター] - 米株式市場では、S&P総合500種が8日の値上がりによって昨年10月12日に付けた終値ベースの直近安値からの上昇率が20%に達した。複数の市場参加者の話では、これは少なくとも数字上で、新たな強気相場の始まりを予告している。
6月8日、米株式市場では、S&P総合500種が8日の値上がりによって昨年10月12日に付けた終値ベースの直近安値からの上昇率が20%に達した。ニューヨーク証券取引所で5日撮影(2023年 ロイター/Brendan McDermid)
S&P総合500種はハイテク株が主導し、0.6%高で取引を終えた。
ただ強気相場に入った、と必ずしも断定できないのは、強気相場と弱気相場には明確な定義が存在せず、規制当局や団体が宣言するわけではないからだ。例えば景気後退(リセッション)であれば、全米経済研究所(NBER)が正式に認定してくれる。
その中で最も一般的に受け入れられているのが、株価が直近安値から20%上がれば強気相場、直近高値から20%下がれば弱気相場という見方だが、さまざまな解釈の余地をはらんでいるのは間違いない。
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスのシニア・インデックス・アナリスト、ハワード・シルバーブラット氏は、「20%理論」は第一次大戦期間中など本当に昔から目にされてきたと指摘しつつ、強気や弱気を判断する上で未だにルールや規制面の権威が見当たらない点に問題があるとの見方を示した。
シルバーブラット氏によると、S&P総合500種の弱気相場はこれまで15回あり、最初に始まったのが1929年9月、今の局面が始まったのは昨年1月3日だ。
CFRAのチーフ投資ストラテジスト、サム・ストバル氏は、弱気相場の判断要素に時間を加味している。安値での推移が少なくとも7カ月続くことを条件とすれば、これでいったん20%ないしそれ以上値上がりした後、また急落する展開を誤って強気相場とみなしてしまうリスクを排除できるからだ。実際世界金融危機において、そうした短期間での乱高下が発生した。
ストバル氏は「2008年11月20日にS&P総合500種は安値を記録し、翌年1月にかけて20%余り上昇したが、すぐに下げに転じ、3月9日までにさらなる安値に沈んだ。この流れは長期的な弱気相場の一時的な戻りだったと考えられる」と説明した。
リチャード・バーンスタイン・アドバイザーズの副投資責任者ダン・スズキ氏は5日のノートで、もっと段階的に判断する方法を披露している。足元の値上がりが全面的な強気相場に発展する可能性を秘めているのは確かだが、過去の例を踏まえれば当然の帰結とは到底言えないためだという。
スズキ氏が挙げた強気相場に共通する要素の一つは、さまざまなセクターにまたがって幅広い銘柄が上昇している構図だ。ところが今の上昇相場は、エヌビディアやメタ・プラットフォームズ、アマゾン・ドット・コムといったごく一握りの超大型株に値上がりが集中しているので、そうした要素は欠けている。
インガルス・アンド・スナイダーのシニア・ポートフォリオ・ストラテジスト、ティム・グリスキー氏も「現在は超大型ハイテク株の強気相場であるのは疑いない。(だが)株式市場全体が強気相場とは宣言しない。なぜならごく一部の銘柄だけが、われわれが言うところの強気相場圏で堅調に推移しているからで、持続的な強気相場と判断するほど十分な裾野の広さはない」と分析する。
ストック・トレーダーズ・アルマナックが強気・弱気相場の定義に際して依拠しているネッド・デービス・リサーチは、また全然違う考え方をしている。彼らによれば、循環的な強気相場入りには、ダウ工業株30種ないし、1700近い銘柄の均等加重方式で算出されるバリューライン・ジオメトリック指数が50営業日経過後に30%、もしくは155営業日経過後に13%上昇することが不可欠になる。
シルバーブラット氏自身は、S&P総合500種が直近安値から20%上がっただけでは、新たな強気相場が始まったとは言えないとの立場だ。S&P総合500種が昨年1月に付けた最高値を超えないうちは、あくまで「弱気相場における上昇」にとどまるという。
(Chuck Mikolajczak記者)
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