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概要:パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は29日に行った講演で、インフレ率を当局目標の2%に押し下げるには、年内に少なくともあと2回の追加利上げが必要になる公算が大きいとの見解を示した。
FOMC参加者の「大多数」が追加利上げ支持-マドリードで講演
「インフレ率を2%に押し戻すプロセスはまだ先が長い」と指摘
パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は29日に行った講演で、インフレ率を当局目標の2%に押し下げるには、年内に少なくともあと2回の追加利上げが必要になる公算が大きいとの見解を示した。
さらに、政策金利を決める連邦公開市場委員会(FOMC)会合について、複数回連続での行動を検討することも「排除していない」としている。
パウエル議長は「FOMC参加者の大多数は、年末までに金利を2回もしくはさらに多く引き上げるのが適切であろうと予想している」と述べ、「インフレ圧力は高いままであり、インフレ率を2%に押し戻すプロセスはまだ先が長い」と指摘した。
スペイン銀行の会議で講演したパウエルFRB議長
マドリードで開催されたスペイン銀行(中央銀行)の会議での議長講演は、1年3カ月ぶりに金利据え置きを決めた13、14日のFOMC会合後の2週間に議長が述べてきた趣旨を繰り返すものだ。
米金融当局者は今月の会合で、これまでの引き締めや銀行セクターのストレスが経済に及ぼす影響を評価するため、利上げを休止する一方で、年内2回の追加利上げが適切かもしれないとの見通しを示唆していた。
パウエル議長は「住宅や投資をはじめとする金利動向に最も敏感な経済セクターの需要に対し、当局の政策引き締めの効果が顕在化している」としながらも、「特にインフレに対し、金融の景気抑制効果がフルに発揮されるには時間がかかるだろう」と発言した。
米金融当局は昨年3月以降、事実上のゼロ金利から急ピッチで引き締めを進め、4会合連続で0.75ポイントの大幅利上げにも踏み切った。その後、昨年12月にはペースを落とし始め、今年5月まで3会合連続で0.25ポイントずつ利上げし、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジは現在5-5.25%となっている。
議長は講演後の質疑応答で見通しは「特に不透明」だとし、「われわれのコミットメントは利上げの特定の回数に対するものではなく、インフレ率を2%に戻すのに十分に景気抑制的な政策スタンスへのものだ」と説明。「さらなる利上げがあるとして、そのタイミングと程度は経済の進展次第だ」と話した。
また、取り組みが行き過ぎもしくは足りな過ぎとなるリスクは「まだ均衡状態にない」と指摘し、「ある会合で行動しない可能性も、それからある会合で行動する可能性もある。連続での行動を検討することをわれわれは排除していない」と語った。
米国が新型コロナウイルス禍以前の低金利環境に戻るかどうかの質問に対しては、それは「かなりの長期間」ないだろうとし、この質問に対する長期的な回答は現時点で持ち合わせていないと答えた。
米消費者物価指数(CPI)総合指数は1年前に記録した前年同月比9.1%上昇のピークから大幅に減速してきたが、変動の大きい食料品とエネルギーを除くコア指数の鈍化ペースははるかに緩慢で、パウエル議長ら当局者はコアインフレの「硬直性」を注視する。
議長はこのほか、連邦準備制度を含む銀行規制監督当局として、シリコンバレー銀行(SVB)など米地銀3行の経営破綻から教訓を得ることにコミットしていると表明した。最大手行は十分な資本があり安全である一方、米銀行システムの規模の多様性は保護が必要で、中規模行やノンバンクの監督強化が求められる可能性がある。
「一連の出来事は、SVBと同規模の金融機関の監督や規制の強化が必要であることを示唆している。改革案を評価して適切であれば実施するのが楽しみだ」とパウエル議長は語った。
FRBでは現在、バー副議長(銀行監督担当)が銀行規制見直しを進めている最中で、近く改革案を提示すると見込まれている。なおパウエル議長は、先週の議会証言でも同様の発言を行っていた。
パウエル議長は、物価安定と金融安定の実現に関する質問には、双方が「固く緊密に関連」しており、インフレ抑制と金融安定の促進には連邦準備制度として別々の手段を用いていると説明した。
議長は、金融当局の利上げと銀行セクターのストレスが相まって信用状況の一層の引き締まりにつながる可能性があるとしつつも、それがどの程度かはまだ分からないとした。
米労働市場を巡っては、タイトな状態が続いているが、需給バランスが改善されつつある兆候も一部表れていると認めた。
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