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概要:アマゾンとショッピファイは8月30日、ショッピファイ向けの新しいBuy with Primeアプリを発表しました。しかしBuy with Primeをショッピファイのプラットフォームに組み込むにあたって、両社の間に緊張関係があったことが内部文書から明らかになりました。
Chelsea Jia Feng/Insider
Eコマースではアマゾン(Amazon)が絶対的な存在——それが一般的な見方だ。だが内部文書や内部関係者へのインタビューからは、そうとも言えなくなりつつあるようだ。
ECの巨人であるアマゾンは数カ月にわたって、自社のサービス「Buy with Prime」をショッピファイ(Shopify)のECプラットフォームに導入しようと試みてきたが、8月30日にようやくそれが実現した。
実現をめぐってはこれまで語られることはなかったが、今回Insiderの取材により、交渉ではショッピファイが驚くべき影響力を行使していたことが明らかになった。
アマゾンの思惑をショッピファイが一蹴
ショッピファイの加盟店がアマゾンの「Buy with Prime」を利用すると、Amazon.com以外のウェブサイトでも、迅速な配送や無料配送などのプライム特典を提供できる。オンライン顧客には配送情報とともにBuy with Primeボタンが表示され、アマゾンのアカウントにすでに保存されている支払い情報と配送情報を使って支払いを完了することができる。
アマゾンは2023年に入り、Buy with Primeのデータをショッピファイのバックエンドシステムに統合する計画をまとめた。ショッピファイがこれを支持すれば、ショッピファイのプラットフォーム向けに発表予定のBuy with Primeのアプリで、加盟店は注文、返品、配送などのデータを直接分析できるようになる。アマゾンはそう目論んでいた。
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だがショッピファイはこれを拒否した。4月のアマゾンの内部文書によると、アマゾンはショッピファイの加盟店に対し、一元化されたショッピファイの管理ツール内ではなく、自社のバックエンドコンソールでBuy with Prime関連の統計情報を表示させるしかなかったという。
「ショッピファイは、Buy with Prime固有の分析機能には投資しない立場を明確にした。それはつまり、われわれのマーチャントコンソールが、加盟店がこのデータの閲覧および分析にアクセスする唯一の場所になることを意味する」(アマゾンの内部文書より)
多忙な加盟店には、異なるポータルからビジネスに関するデータを取得して手作業で結合する時間がないことが多いため、このデータ統合は重要だった。Buy with Primeのデータがショッピファイの管理画面にスムーズに統合されなければ、ショッピファイの加盟店はアマゾンの機能をあまり使用しないかもしれない。これは、自社のECサイトやアプリ以外にも手数料を生むサービスを拡大しようとしているアマゾンにとっては打撃となるはずだ。
それから4カ月が経過し、両社は休戦協定を結んだようだ。8月30日、アマゾンとショッピファイは、ショッピファイプラットフォーム向けの新しいBuy with Primeアプリを発表、加盟店が「ショッピファイの管理画面内で注文、プロモーション、カタログ掲載、税金を自動的に同期」が可能とした。
しかし文書やプロジェクト関係者によると、緊迫した交渉において、他の事項はアマゾンの思い通りにはいかなかったという。強力になりつつあるライバルに協力を求め、妥協と譲歩を余儀なくされた、アマゾンにしては珍しいケースだ。
アマゾンの文書内では、ショッピファイを「市場最大のターンキー(編注:「鍵を回せばすぐに使える」ことから、契約後ただちに稼働できる状態のシステムのこと)型ECサービスプロバイダー」と表現している。
そして発表された最終合意内容では、ショッピファイのプラットフォームでのBuy with Primeに関する取引はすべて、ショッピファイの支払い処理サービスが使われることになっていた。アマゾンが大きく譲歩した格好だ。
アマゾンとショッピファイは、今週出された公式声明以外はコメントを出していない。
プロジェクト・サントス
ショッピファイの成長に危機感を強めたベゾスは、「サントス」と名付けられた極秘プロジェクトを立ち上げた。
Kevin Mazur/Getty Images for DJ
Buy with Primeは、ショッピファイの急速な成長に危惧を抱き始めたアマゾン創業者のジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)が、「プロジェクト・サントス」と呼ばれる極秘の取り組みをスタートさせたことから生まれた。
2020年にはショッピファイの株価は急騰し、同社の時価総額は約1300億ドル(約18兆8500億円、1ドル=145円換算)に達した。アマゾン幹部がこの対応に追われるなか、当初はショッピファイと完全に競合するサービスをつくるという話がアマゾン社内では出ていた。仮に実現していれば、アマゾンは2015年にオンライン立ち上げ支援サービス「ウェブストア(Webstore)」の終了で撤退した市場に再参入していたことになる。
だが実際にはそうはならず、代わりに2022年4月にBuy with Primeが登場した。しかしそれさえも両社間に緊張をもたらし、ショッピファイは一時、加盟店にBuy with Primeを使用しないよう警告したこともあった。アナリストの中には、Buy with Primeをアマゾンがショッピファイからシェアを奪うための「トロイの木馬」と見る向きもある。
相次ぐ遅延
アマゾンの内部文書によれば、アマゾンの経営陣はショッピファイ向けのBuy with Primeアプリを「最重要」目標と位置づけているという。というのも、このアプリはショッピファイの加盟店にBuy with Primeの魅力をさらに高めてくれるものだからだ。
しかし、匿名を条件にInsiderの取材に応じたプロジェクト関係者らの話では、ショッピファイはたびたびリリース日を遅らせ、スケジュールを延長したという。
同文書が作成された時点で、アマゾンはすでに、ショッピファイアプリ用の新しいBuy with Primeの一般提供日を7月下旬から8月14日に延期していた。アマゾンは、顧客が一度に複数のBuy with Prime対象商品を購入できる新しいミックスカート機能を導入したかったため、さらに遅れることを見越していたのだ。ショッピファイは、早くても2024年第2四半期までに、つまり向こう1年以内にその機能を追加することだけを約束している。
アプリの最初のバージョンについて、「当社はV1のリリースをさらに遅らせる必要がある」と文書には記載されている。
このプロジェクトに詳しい関係者によると、ショッピファイはリソースが限られていることを理由に、明確な提供日を握ることを拒否したという。関係者の一人によると、アマゾンが2022年に初めてBuy with Primeを発表した際、ショッピファイがこれを「毛嫌いしていた」ことから、関心を持っていないことは予想されていたという。
8月30日の発表によれば、この新しいアプリはまだ招待制であり、アマゾンのフルフィルメントサービスを利用しているアメリカ拠点のショッピファイ加盟店全店に9月末までに展開される予定だ。
アマゾンは、加盟店や投資家からの要望が強いミックスカート機能の立ち上げを加速するため、ショッピファイのシステムアーキテクチャにほとんど変更を加えずに済む「ライト」バージョンの構築を選択した。後日ミックスカート機能をサポートするとショッピファイから言質をとったのと引き換えに、約4カ月かけて独自でライトバージョンを開発することをいとわなかったのだと同文書にはある。
「ショッピファイがミックスカートに対応するためにシステムを改善すれば(つまり、ライトカートが不要になれば)、アマゾン側で無駄になる作業は、ライトカートUI構築の作業分(開発期間は3~4カ月以下)のみだ。ショッピファイとは高いレベルで一致はしているものの、我々は低いレベルの詳細についてはいまだ固めてはいない」(アマゾンの内部文書より)
ショッピファイのトビアス・リュトケCEO。
David Fitzgerald/Sportsfile via Getty Images
アマゾンはまた、アマゾン独自の物流サービスを通じて出荷される荷物にリアルタイム配送追跡機能を追加したいというショッピファイの要求にも配慮し、それを優先しようと努めた。同文書によれば、アマゾンロジスティクス(Amazon Logistics)はBuy with Primeに関連する注文の約70%を扱っているが、ショッピファイにはそうした荷物の追跡機能がないという。
「当該アプリにアマゾンロジスティクスの追跡機能を組み込むことは、ショッピファイにとって戦略的に重要な事項であり、この作業を優先しなければおそらく争点になるだろう」と文書には書かれている。ショッピファイは2023年に入ってから物流事業を売却しており、この分野でアマゾンと競合することを事実上断念している。
統計情報の精度に見劣り
もう一つ争点となったのは、閲覧、チェックアウトプレビュー、注文、反応時間などのクリックに伴う統計情報を完全に測定することだった。
アマゾンは加盟店、商品、顧客のレベルでデータを取得できるようショッピファイが支援してくれることを望んでいたが、アプリのバージョン1.0の利用開始までに「ショッピファイがこの作業のリソースを確保できなかったため」、アマゾンは堅牢性で劣る内部統計情報を代わりに使用することを決めた。
「これは、深く掘り下げる目的でカスタマージャーニーをつなぎ合わせるには顧客レベルでの精度に欠け、統計情報の精度が低くなることを意味する」(アマゾンの内部文書より)
以上見てきた問題のうち、いくつ解決されたかは不明だ。アマゾンとショッピファイは8月30日の発表で、両社は「今後も追加機能を展開する」ために「引き続きやりとりをしていく」としている。
ウォール街ではかねてより待ち望む声
新しいショッピファイ用Buy with Primeアプリの提供は、ウォール街では長らく待たれていた。過去1年間、ショッピファイの決算発表ではほぼ毎回決まってアナリストからこれに関する質問が出た。直近の8月初めの決算発表では、ショッピファイの社長ハーレー・フィンケルスタイン(Harley Finkelstein)はイライラした様子だった。
「ええ、アマゾンとは引き続き生産的に話し合いをしていますが、現時点で共有できるニュースはありません」(フィンケルスタイン)
一部の業界専門家は、8月30日の発表には新サービスの詳細な説明はなく、ほとんど間に合わせのように見えたと指摘する声もある。
オンラインショッピングコンサルティング会社、ネタリコ・コマース(Netalico Commerce)のマーク・ウィリアム・ルイス(Mark William Lewis)CEOはInsiderの取材に対し、「むしろ実装完了前の提携発表のようだった」と感想を語る。
決済はShopifyペイメントに
ショッピファイにとって今回の発表の目玉は、新しいBuy with Primeアプリの決済処理部分が確保されたことだ。ショッピファイの収益の大部分は決済処理手数料によるため、これは重要なことだ。
アマゾン社内では、加盟店の間でShopifyペイメントの人気が低いことに対する懸念の声が上がっていた。アマゾンの内部文書は、これを「ショッピファイアプリを採用しない加盟店にとって最大の障害」だと説明しており、その理由として、加盟店がすでに他の決済プロバイダーとクレジットカード手数料の値下げ交渉を行っていること、決済処理はすべてストライプ(Stripe)などの単一ベンダーに集約したいと思っていることなどを挙げている。なおショッピファイは、別の決済プロバイダーを選択した加盟店に追加料金を課している。
在庫の二重カウント問題
アマゾンはBuy with Primeアプリを、最終的には同社のマルチチャネルフルフィルメントサービスと統合する予定だ。これにより、加盟店はアマゾン以外の注文でもアマゾンの倉庫と配送ネットワークを利用することになる。
またこの方法を採ることで、オンボーディングが簡素化され、「ショッピファイにとっては大きな懸念であり、アマゾンにとっては以前予想していたよりも大きな懸念」である在庫の二重カウント問題が解決されるため、加盟店の登録増につながる可能性がある、と文書は指摘している。
本件に詳しい関係者によると、アマゾンはこの取り組みの一環として、2つのチームを社内で統合しているという。なお、統合されたアプリがいつ提供されるかは不明だ。
明るい兆しも
この提携には明るい兆しもいくつかあった。例えば、Buy with Prime対象商品の隣にアマゾンのレビューを表示する「Reviews from Amazon」機能は、加盟店にとって「大変革」となったと文書には記されている。内部調査では、顧客の61%が、この機能が知名度の低い加盟店から購入する際の信頼感を高めてくれると考えていることがわかった。
この文書では、「北極星と信条」——つまり、ショッピファイ向けの新Buy with Primeアプリの指針についても言及されている。
北極星とは「顧客にとって非常に魅力的なネイティブ(ショッピファイのシステム内に組み込まれているものを意味する)体験を生み出すこと」を意味しており、それを提供しない加盟店は無責任だ、と文書は主張する。
また信条とは、加盟店の売上増を優先すること、迅速な配送と無料返品といったアマゾンプライムの高いハードルを満たすこと、など6つの項目からなる。同文書ではまた、ショッピファイとの対立姿勢を解決し、「ともにより良い」サービスを構築する必要性も強調されている。
「われわれは、ショッピファイを利用することで、顧客と加盟店の『より良い共同』体験を作り上げることができると信じている。『パイを増やす』ために、それぞれの企業が提供する重要な差別化要因(プライム、マルチチャネルフルフィルメント、Amazonアプリ、ショップアプリなど)に傾注する」(アマゾンの内部文書より)
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