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概要:いま世界の金融関係者の注目は、米経済がいつ景気後退入りするのか、あるいはしないのか。メリルリンチやサンフランシスコ連銀で活躍した伝説のエコノミスト、ゲーリー・シリング氏は「間もなく景気後退入り」「株価急落」を予想します。
米経済の危機回避予想に安堵する声も聞こえる中、著名エコノミストのゲーリー・シリング氏は景気後退入りに伴う大幅な株価下落を予想する。
Spencer Platt/Getty Images
伝説のエコノミストと呼ばれるゲーリー・シリング氏によれば、米経済は景気後退入りこそまだにせよ、そこに向かって突き進んでいるという。
「景気後退入りはおそらく間もなくです。もしかしたらもう始まっているのかもしれません」
サンフランシスコ連邦準備銀行のスタッフやメリルリンチ(Merrill Lynch)のチーフエコノミストなどを務めたシリング氏は近ごろ、Insiderのインタビュー取材に応じた。
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シリング氏の考えによれば、インフレ率を長期目標の2%まで引き下げることに固執する連邦準備制度理事会(FRB)の姿勢こそが、景気後退に現実味を帯びさせている。
米労働省が発表した直近8月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は前年同月比3.7%、エネルギーと食品を除くコア指数の伸びは同4.3%。
論理としてはつまりこういうことだ。
FRBの政策金利引き上げを受けて市中金利が上昇すると、自動車ローンや住宅ローン、クレジットカード、ビジネスローンの負担が増し、人々の購買意欲を低下させるので、景気の減速につながる。
景気の減速すなわち需要の減速により、理論的にはインフレが抑制されるものの、同時にしばしば企業の利益を毀損(きそん)し、雇用を縮小させる副作用もある。
FRB幹部はこれまでもインフレ率を目標水準まで引き下げる意向を繰り返し表明していることから、市場はFRBの年内利下げ開始を見込み薄と踏んでいる。
「FRBはインフレを確実に鎮圧したいのです」(シリング氏)
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景気後退を示唆する経済指標
2008年の世界金融危機時の景気後退を予測したシリング氏は、FRBが利下げに着手するまで景気後退に至らないケースもあると指摘する。利上げの経済への影響が完全に浸透するまでにはタイムラグがあるからだ【図表1】。
【図表1】1986年以降の実質FF(フェデラル・ファンド)金利の推移(青線)と米経済の景気後退期(グレー部分)の関係。利下げ着手後に景気後退入りしているケースが4度ある
The Federal Reserve Bank of St. Louis
メリルリンチやグラスキン・シェフでチーフエコノミストを務め、シリング氏と同じように2008年の展開を事前に予測したデービッド・ローゼンバーグ氏によれば、FRBの利上げサイクルがソフトランディングを実現できたのは(第二次大戦後)わずか20%にすぎず、残り80%のケースでは景気後退に陥っている。
シリング氏によれば、信頼できるいくつかの経済指標も、景気後退が迫っていることを示唆している。
米国債のイールドカーブがその一つだ。1960年代以降、「逆イールド(短期金利が長期金利を上回る状態)」が確認された後は、毎度確実に景気後退が起きている。
逆イールドは、FRBの利上げを受けて短期国債の利回りが上昇し、投資家が景気の先行きを懸念して10年物米国債のような安全資産に集中的に逃避することで発生する【図表2】。
【図表2】10年物米国債の利回りから3カ月物米国債の利回りを引いたスプレッド(差)の推移。スプレッドがゼロを下回るのが「逆イールド」の状態で、いずれもその後に景気後退(グレー部分)入りしている。
Federal Reserve Bank of St. Louis
景気後退を示唆するもう一つの経済指標が、米民間調査機関コンファレンスボード(全米産業審議委員会)の景気先行指数だ。
同指数は、製造業の平均労働時間やマネーサプライ(資金流通量)、長短金利スプレッド、S&P500種株価指数、消費財の新規受注額、新規失業保険申請件数など、景気に先行して反応するとみられる10項目の指標を総合して算出される。
これもイールドカーブと同じように、過去の景気後退局面では確実に先行指標として機能してきた。直近では2022年以降、景気後退入りを示唆するシグナルを発している【図表3】。
【図表3】米コンファレンスボード景気先行指数(LEI)の推移。マイナス転換(黒太線)は警告シグナル、大幅なマイナス(赤太線)は景気後退シグナル。2000年以降でも、後者のシグナル時には100%景気後退(グレー部分)が起きている。
The Conference Board
景気後退入りした場合、大幅な株価下落が起きるとシリング氏は予測する。
今回の景気サイクルで言えば、S&P500種株価指数が高値から安値まで40%下落するというのが基本シナリオだという。
直近の高値は2022年1月初頭につけた4796。そこから40%下落すると想定される安値は2877と計算される。9月15日終値が4450なので、シリング氏の見方が正しければ、ここからさらに36%下落するわけだ。
実際、過去の景気後退の多くは株価急落を伴ってきた。新型コロナ感染拡大を契機とする2020年の景気後退は下落幅が35%、世界金融危機時の2008年のそれは50%、ドットコムバブル崩壊時の2000年は45%だった。
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景気後退入りしたら株価は「暴落」するのか
今回のサイクルで景気後退入りした場合に大幅な株価下落が予想される理由の一つは、バリュエーションの高さだ。
オランダ資産運用大手ロベコ(Robeco)が作成した下の【図表4】は、時価総額をGDP(国内総生産)で割って算出する「バフェット指数」、株価をインフレ調整済みの過去10年間の1株当たり純利益の平均値で割って算出する「シラーPER」、時価総額を資産の時価評価額で割って算出する「Qレシオ(実質株価純資産倍率)」の推移を示す。
【図表4】バフェット指数(紫線)、シラーPER(青緑線)、Qレシオ(赤紫線)の1900年以降の推移。いずれも過去最高水準のバリュエーション(割高状態)を示す。
Robeco
いずれのバリュエーション指標も史上最高値の更新にこそ至っていないものの、過去のバブルに匹敵する水準で高止まりを続けている。
こうしたバリュエーションの高さを根拠に、ジェレミー・グランサム、デービッド・ローゼンバーグ、ジョン・ハスマンといった著名な専門家たちは現状をバブルと位置づけて警鐘を鳴らす。
ただ、バブルが弾けるには一般的に何らかのカタリスト(変動を誘発する材料やきっかけ)が必要で、それになり得る目下最大のリスクこそが景気後退だ。
8月17日に発表されたロイターのエコノミスト調査によれば、今後1年以内に米経済が景気後退入りする可能性は55%と見込まれる。2022年10月時点では65%だった。
仏銀大手ソシエテ・ジェネラル(Societe Generale)のチーフグローバルストラテジストで、2000年のドットコムバブルの終焉を予言したアルバート・エドワーズは最近の顧客向けメールで、利上げサイクルが経済に影響を及ぼし始めていると警鐘を鳴らしている。
エドワーズはこう指摘する。
「時価総額の大きな巨大企業を除いて、それ以外の圧倒的多数の企業はいま大きな困難に直面しているのです」
下の【図表5】は、S&P500種指数を構成する企業が負債に対して支払う実質金利の推移だ。
【図表5】時価総額別に見たS&P500種構成銘柄の対債務実質金利の推移。足元では、時価総額下位50%の企業が支払う実質金利(青緑線)が6%超と、上位10%企業(赤線)の倍近い水準。
Societe Generale
それでも、個人消費は(クレジットカードの延滞率の増加が確認されているものの)引き続き堅調で、失業率も依然として歴史的な低水準にとどまり、実質GDP成長率はプラス水準で推移している。
そうした米経済の底堅さもあって、今夏の見通しは強気に傾いた。前出のロイターによるエコノミスト調査は、6月まで景気後退の可能性を60%超としていたが、先述のように8月中旬には55%に低下した。
しかし、この高金利環境の下で景気がどの程度持ちこたえられるか、今後数カ月間の見通しは立たない。失業率が急上昇し、消費軟化の兆候がさらに強まれば、高水準のバリュエーションがしぼむ可能性も考えられる。
※本記事は取材対象者の知識と経験に基づいて投資の選定ポイントをまとめたものですが、事例として取り上げたいかなる金融商品の売買をも勧めるものではありません。本記事に記載した情報や意見によって読者に発生した損害や損失については、筆者、発行媒体は一切責任を負いません。投資における最終決定はご自身の判断で行ってください。
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