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概要:米金融当局者の発言には今週に入りトーンの変化がうかがわれた。当局がいつ利下げを開始するのかという、市場でしばらく交わされている会話に少し近づいた形だ。
パウエルFRB議長は12月1日にジョージア州アトランタのスペルマン大学で討論会などに参加する予定で、利下げについて話すというよりも、インフレ退治で勝利宣言するには時期尚早だと繰り返す可能性の方がはるかに大きい。
また、市場は2024年に計4回の0.25ポイントずつの利下げの可能性を織り込んでいるものの、インフレ再加速のリスクを懸念して、FOMC参加者は引き続き一段と高めの金利を予想する公算が大きい。
KPMGのチーフエコノミスト、ダイアン・スウォンク氏は「パウエル議長はシャンパンの栓を抜いてしまわないように慎重になるだろうが、スローガンは『より高くより長く』から『より高く十分に長く』にすぐに変わるだろう」とみる。
その上で、12月のFOMC会合後に公表される四半期経済予測に関し、「インフレ率は当局者が予想していたよりも速いペースで低下しており、9月時点よりも一層多くの利下げを予想することになるのではないか」と話した。
市場が織り込む来年3月のFOMC会合での0.25ポイント利下げ確率は五分五分で、5月については現時点で100%となっており、来年末までに計1ポイント余りの利下げを見込んでいる。
これに対し、当局者が9月公表の四半期予測で示した24年末時点のフェデラルファンド(FF)金利の予想は中央値で5-5.25%と、現行水準をわずか0.25ポイント下回るだけだった。
ウォール街にはもっと大胆な予想もある。来年に軽度のリセッション(景気後退)を予想するドイツ銀行は今週、米金融当局が6月に利下げを開始する可能性があり、利下げ幅は年末までに計1.75ポイントに達するとの予測を繰り返した。
米運用会社パーシング・スクエア・キャピタル・マネジメント創業者で資産家のビル・アックマン氏は、当局が1-3月(第1四半期)にも利下げに踏み切ると見込んでいる。
BNPパリバの米国担当シニアエコノミスト、エレーナ・シュルヤティエバ氏は、ウォラー理事の最近の発言を踏まえ「パウエル議長が利下げについて見解を示すとの期待は明らかに高まった」とする一方、「議長は新たなハト派トーンをしっかりと確認するまでには踏み込まないだろう」と語った。
「結局、米金融当局の目標はソフトランディング(軟着陸)の達成では必ずしもなく、インフレ率を2%の当局目標に戻すことだ」と、シュルヤティエバ氏は説明した。
最近のインフレ動向を巡るニュースは明るいものだ。10月の個人消費支出(PCE)価格指数のうち、変動の大きい食料品とエネルギーを除くコア指数は前月比0.2%の上昇で、総合価格指数は前年同月比3%上昇と、21年以来の低い伸びとなった。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の米国担当チーフエコノミスト、アナ・ウォン氏らは「10月の個人所得・消費支出は、FOMC参加者の間で金利が十分に景気抑制的だとの確信が強まっている理由を示すものだ。少なくとも24年半ばまではディスインフレのモメンタムが続く方向にあり、コア指数は3%を下回る可能性がある」との分析を示した。
そうはいっても、インフレ鈍化の進展が失速したり反転したりさえする可能性を金融当局者は引き続き懸念している。リッチモンド連銀のバーキン総裁とボウマンFRB理事は、インフレがしつこく高止まりする場合、追加利上げの可能性に言及している。
チャールズ・シュワブのチーフ債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏はパウエル議長について、いかなる種類の時間枠の提示も避けるよう努め、1-3月期の利下げの可能性に扉を開くことはないと予想する。「ただ、インフレ率が低下する一方で、失業率が低めのまま推移している現状には恐らく満足感を示唆するだろう」と指摘した。
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