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概要:米国では住宅販売の落ち込みが個人消費に影響を与えつつある。家具や家電製品を買いそろえる必要のある住居に引っ越す米国人が減っているためだ。
高価な家具への出費を消費者ためらう-ウィリアムズ・ソノマCEO
引っ越しに伴い、2年間で関連商品や改修に平均8000ドルの追加支出
米国では住宅販売の落ち込みが個人消費に影響を与えつつある。家具や家電製品を買いそろえる必要のある住居に引っ越す米国人が減っているためだ。
こうした影響は経済全体に及んでいる。家具や関連商品への支出は、10月に前年同月比で12%近く減少。家具・家庭用品小売りのZギャラリーや寝具メーカーのサータ・シモンズ・ベディングは今年に入って需要減退を理由に破産法の適用申請を行っており、こうした事例は今後もさらに増えることが予想されている。
家具販売のウィリアムズ・ソノマの最高経営責任者(CEO)は11月、消費者は高価な家具への出費をためらっていると指摘。ホームセンター大手のホーム・デポは今年度について減収の可能性が高いと説明している。
米連邦準備制度は昨年、インフレ抑制に向けて利上げを開始したが、住宅市場の減速はそれを実現する上での重要な経路となる。住宅ローン金利は10月に2000年以来の高水準に達し、住宅は少なくとも1980年代以来、最も手が届きにくくなった。
10月の米中古住宅販売成約指数はデータがさかのぼれる01年以降で最低となった。連邦準備制度が来年には金融緩和に転じるとの期待が高まる中、住宅ローン金利は低下し始めているが、住宅市場が正常な状態に戻るには数年を要するかもしれない。
過去最低に落ち込んだ中古住宅販売成約指数
全米小売業協会(NRF)のチーフエコノミスト、ジャック・クラインヘンツ氏は「金利が今よりずっと低かった2、3年前と比べ、単純に、住宅は購入するのに手頃な価格ではなくなっている。それに伴い一定の支出が行われずにいる」と語る。
減収
ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院のエフレイム・ベンメレク教授らが昨年発表した研究によると、平均的な世帯は住宅購入後の2年間で、関連商品や改修に8000ドル(約118万円)を追加で支出している。
こうした支出がなくなれば小売業者には厳しい。ウィリアムズ・ソノマは先月、今年度の売上高が最大12%減少するとの見通しを示した。家具製造・販売のイーサン・アレン・インテリアズは、需要の鈍化などで7-9月期は24%減収となった。
ローン金利は大きく上昇していることから、住宅販売件数がいつ回復するかは不透明。多くの住宅所有者が売却に消極的な理由の一つは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)期に設定した割安な住宅ローンを手放すことになるからだ。
ブラックナイトのデータによると、米国人の住宅ローンの金利は60%強が4%未満である一方、米フレディマック(連邦住宅貸付抵当公社)の30年物固定住宅ローン金利は現行7.2%近い。
ロックイン
イリノイ大学アーバナシャンペーン校のジュリア・フォンセカ教授らの研究によると、平均的に、現在組んでいる固定金利ローンに比べ住宅ローン金利が1ポイント上昇すると、住み替え率は9%低下する。つまり、住宅所有者が転職を考える場合、既存の住宅ローンを手放すには、新たな職場の給与は相当上昇しなければならない。
低金利で住宅ローンを組んだ住宅保有者が住み替えによる負担増を避けるために住み続ける「ロックインは、それがなければ価値があったであろう労働市場での機会を、家計の面から断念してしまうことにつながりかねない」とフォンセカ氏はインタビューで語った。
また、全米ホームビルダー協会(NAHB)のチーフエコノミスト、ロバート・ディエツ氏は、高水準の金利は需要側の活動を抑制するだけでなく、供給側でも価格を押し上げており、当面高止まりの恐れがあると指摘する。
一戸建て住宅の建設資金を調達するために建設業者が支払う金利は13%近くに達しており、インフレで資材価格も上昇しているとディエツ氏は語る。そのため、現在は新築住宅の着工がより難しくなっており、2-3年にわたって供給は限られる可能性がある。この影響はしばらくの間、米経済全体に及びかねないと同氏はみている。
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