低ボラティリティーに賭けたクオンツファンド、23年に64％リターン

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2023年12月20日 12:55 JST

ＡＢＲのファンドはシステマティックにＶＩＸをショート

• ＶＩＸは４年ぶりの低水準近くに低下－利上げの逆風にもかかわらず

クオンツファンド運営会社のＡＢＲダイナミック・ファンズの１ファンドは、株式市場のボラティリティー低下に乗る戦略で2023年にプラス64％のリターンを上げた。

ＣＢＯＥボラティリティー指数（ＶＩＸ）は23年、新型コロナウイルス禍後の低水準まで低下。ＡＢＲエンハンスト・ショート・ボラティリティー・ファンドは、同指数先物のショートを含むシンプルなシステマティックアプローチが奏功した。

米金融政策を巡る乱高下の間も含め、ＶＩＸは不思議なほど低水準にとどまったため、大きな利益を上げることができた。

ＡＢＲダイナミック・ファンズの５億ドル（約720億円）の運用資産の４分の１は低ボラティリティーに賭ける取引に集中している。20年の新型コロナに端を発した市場の大暴落と18年の「ボルマゲドン」によって淘汰（とうた）された後、ボラティリティーのショートに特化した戦略のファンドは最近めっきり見かけなくなった。

10年にＡＢＲを設立したテイラー・ルコフ氏は「ボラティリティーのショートが株式の部分的な代替となる素晴らしいものであることを人々が学び始める時だ」と語った。

この戦略に基づくエンハンスト・ショート・ボラティリティー・ファンドは、ケプラー・パートナーズが今年追跡した500以上のオルタナティブファンドの中でトップクラスにランクされている。

ＡＢＲは定量的手法を使って資産動向を把握し、ボラティリティーを巡る取引をダイナミックに動かす。市場混乱期にはボラティリティーをショートする戦略による損失を抑制するために現金と長期の米国債にシフトしたこともあった。

今年は、数十年で最も積極的な利上げ、企業収益の減少、地方銀行の破綻などで、株価の変動が低下するとの賭けはは確実なものとは思えなかった。しかし、ＶＩＸは４年ぶりの低水準近くまで低下した。

ＣＢＯＥユーリカヘッジ・ショート・ボラティリティー・ヘッジファンド指数は今年９％近く上昇し、３年連続の上昇に向かっている。しかし、ユーリカヘッジによると、ショート・ボラティリティー戦略のヘッジファンドの数は、15年の15からわずか７に減っている。

それでも、ボラティリティーの売りを伴う株式戦略は、今年の上場投資信託（ＥＴＦ）業界で活況を呈し、資金が流入している。パイパー・サンドラーのオプション部門責任者ダニエル・カーシュ氏は「ショート・ボラティリティー戦略は、新たな様相を呈している」と指摘した。

ＡＢＲのルコフ氏は「100％純粋なショート・ボラティリティー・エクスポージャーを単独で使うことは勧められない。長期投資家はロング・ボラティリティーとショート・ボラティリティーの両方のエクスポージャーを持つ方がいい」と話している。