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概要:「中国・ニュージーランド(NZ)観光年」と銘打たれた今年だが、中国共産党系の新聞、環球時報は中国人観光客がNZへの旅行計画を考え直していると最近報じた。華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が供給する第5世代(5G)移動通信機器をNZの電話会社が使うことを禁止するとの方針をNZ側が打ち出したためだ(NZ政府は華為への門戸は閉ざしていないと今は言っている)。
「中国・ニュージーランド(NZ)観光年」と銘打たれた今年だが、中国共産党系の新聞、環球時報は中国人観光客がNZへの旅行計画を考え直していると最近報じた。華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)が供給する第5世代(5G)移動通信機器をNZの電話会社が使うことを禁止するとの方針をNZ側が打ち出したためだ(NZ政府は華為への門戸は閉ざしていないと今は言っている)。
「その国がどれほど温かく観光客を歓迎するかが中国国民の旅行先選択に影響を与える可能性がある」と中国国有のツアー旅行会社、中青旅(チャイナCYTSツアーズ・ホールディング)の幹部は説明するが、こけ脅しではない。中国人観光客の急減でパラオや韓国などは実際に大きな打撃を受けたことがあり、政治の主張のためには国民の旅行先を別の国に誘導するのもいとわないのが中国政府だ。ただ、この「公然の秘密兵器」ともいうべき常套(じょうとう)手段の効果が今後長続きしそうにないことは、NZをはじめとする観光立国にとっては良いニュースだ。
海外旅行を楽しむ中国人は今、何十年にもわたる渡航制限を中国政府が緩和し始めた1980年代前半生まれが中心。渡航可能な地域は当初、香港や東南アジアなどに限られていた。中国側が関係回復を目指すという政治目的でこうした地域が選ばれたのは明らかだった。
90年半ばの所得増加に伴い海外旅行需要が拡大し、一段の規制緩和を迫られた政府は渡航先を個別に認可する「ADS」と呼ばれる制度を導入。中国の旅行代理店がADS認定を受けた国向けの団体ツアーを扱うことを許可するとともに、認定国による中国での観光マーケティング活動を認めるというものだ。
ADSの効果は驚くほどで、2018年には中国本土に住む1億5000万人近くが越境旅行を楽しみ、中国は世界一のアウトバウンド大国になった。中国人観光客を受け入れる国の恩恵も大きく、ある調査はADS認定後の3年間にその国を訪れる中国人が50%余り増えることを示した。NZは国内総生産(GDP)の6%を旅行・観光業から直接得ており、海外からの観光客数で言えば中国はオーストラリアに次ぐ2位だ。
だが17年、中国は韓国への団体ツアーの認可を休止。韓国政府が米軍の高高度防衛ミサイル(THAAD)配備を決めた後のことだ。同年だけで韓国の観光業界は70億ドル(約7750億円)近い打撃を被ったと韓国政府は試算する。昨年になると中国は、台湾との外交関係を維持すると決めた太平洋の島国パラオへの団体ツアーを禁止し、観光業で成り立つパラオ経済は壊滅的打撃を受けた。パラオの観光客の約45%が中国人だった。
そうした中で中国人が一段と豊かになり、より洗練されて自信を持つにつれ、この経済兵器の威力は確実に薄れそうだ。今のところは政府の制限対象でない個人旅行が選好されるようになっているからだ。13年時点で中国人海外旅行客に占める個人旅行者は37%だったが、18年前半にはその割合が50%に達した。中国最大の旅行代理店、携程旅行網(Cトリップ・ドットコム・インターナショナル)経由での予約が示している。豪州への旅では中国人の58%が個人旅行を選び、14年の42%から割合が上昇。18年4-6月に米国を旅していた中国人の78%は個人旅行客だった。
高度な教育を受け比較的恵まれた若い世代は、それまでの世代よりも消費の選択で自立志向が強まっていることがうかがえる。韓国旅行が制限された後も何百万という中国人が個人で韓国旅行を続け、制限解除後も団体客より戻りが早かった。また、愛国心に訴える作戦も必ずしも機能しないようだ。華為幹部がカナダで逮捕された後、高級防寒アパレルメーカーのカナダグース・ホールディングスの製品をボイコットするよう広範な呼び掛けがあったが、消費者はなびいていない。
こうした中国の変化を早くから認識していたのがNZだ。中国が最近脅しをかけてくる前から、NZの観光局は中国でマーケティング活動の対象を金銭的に余裕のある個人にシフトし始めていた。こうした取り組みを続けることが中国政府に抵抗する最善策かもしれない。
(アダム・ミンター氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
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