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概要:マイクロフトの複合現実ギアの最新モデル「HoloLens 2」がバルセロナで発表された。その内容は、国内有数の開発者たちも想像しなかったレベルだという。何が「すごい」のか、10のポイントで解説する。
HoloLens 2で実現する用途のイメージ。工場などで見えない部分を仮想CGで「透視」したり、このように手術部位のCGを見ながら術野のイメージを医療チームで共有するといったような使い方が可能。
新型の「HoloLens 2」。具体的なサイズは明示されていないが、ゴーグル部分や頭の周囲を固定するバンド部分など、従来に比べると少しコンパクトになった印象を受ける。
マイクロソフトは2月24日(現地時間)、仮想空間の3D立体物(オブジェクト)が現実空間に存在するかのように体験し、操作できるミクスド・リアリティ(MR、複合現実)デバイスを大幅にアップデートした新型「HoloLens (ホロレンズ)2」を世界初披露した。
世界最大級のモバイル機器の展示会「MWC2019」が開催されるバルセロナにて発表された。
価格は3500ドル(約39万円)、初期出荷の10カ国には、アメリカのほか日本も含まれる。
日本マイクロソフトによると、日本語版のプレオーダーページは現在製作中で、近々オープン予定だ。
深夜のMS社内に響く歓声、開発者の想像超えの「ホロレンズ2」
パブリックビューイングの解説・登壇者たち。前列左から、VRメディアPanora代表の広田稔氏(モデレーター)、MRベンチャーのホロラボCEO中村薫氏、VRエバンジェリストのGOROman氏、日本アイ・ビー・エムの戸倉彩氏。後列はサポーター有志のマイクロソフト社員。
「うおおお!!!」
「鳥肌が立つ、やばい」
25日に日付が変わったばかりの深夜2時、米マイクロソフトのYouTube公式チャンネルに登場したホロレンズの父、アレックス・キップマン氏がホロレンズ2を解説しはじめるや、日本マイクロソフトの一室は歓声にわいた。
ホロレンズの父、アレックス・キップマン氏。
Microsoft
31階のカンファレンスルームでは、日付が変わる頃から集まり出したホロレンズ開発者コミュニティーのメンバーや一般参加者50名ほどによる、パブリックビューイングを開催していた。
初代ホロレンズは2016年3月に発売。その時点でも極めて未来的で、研究室レベルかと思うほどの最新技術をつめこんだものだった。しかし、新型のホロレンズ2が2019年のテクノロジーで作り出そうとする世界観には、初代が登場した時と同水準のインパクトがある。
初代ホロレンズで性能や精度が足りなかった部分、制約があった部分を、パワーユーザーである開発者たちすらも予想しなかったほど、徹底的に改善してきた形だ。
詳細な情報はMWC2019期間中に行われる実機体験などの中で明かされていくと思われるが、現時点で判明している機能や向上した性能をサマリーとしてまとめた。
1. 解像度、視野角が2倍に
従来の解像度にあたる数字は2倍に増え、より精細な映像表現が可能になった。
視野角も2倍に広がったとアピール。視野の中心部付近でのみ表示できた従来から、どこまで没入感が変わったのか気になるところ。
ホロレンズ開発者の間で改善要望が大きかった「解像度」と「視野角」がそれぞれ2倍に改善される。つまり、描ける3Dオブジェクトがより綺麗になり、視野の中にオブジェクトを投影できる範囲が大きく広がることになる。
2. 虹彩認証に対応、「目でログイン」が可能に
アイトラッキングに加えて、虹彩認証もサポート。
ホロレンズシリーズは、これ単体がPCのようなWindowsデバイスなので、当然「ログイン」が必要になる。その操作に、新たにホロレンズ2が内蔵する虹彩認証を使えるようになった(Windowsの生体認証であるWindows Helloの機能として提供)。ホロレンズ2では、装着したユーザーの視線の動きをとらえるアイトラッキング機能もあり、目線を使った何らかの操作もできるのかもしれない。
3. 両指10本の高精度なジェスチャー認識
映像をよく見ると、指の1本1本に対物認識のメッシュが描画されていることがわかる。わずかなジェスチャーしか使えなかった初代からは、操作面でも大きな進化だ。
パブリックビューイングでは、この点を「注目すべきアップデート」だと指摘する声も多かった。
これまで初代ホロレンズは限られたジェスチャーしか認識できなかったため、3Dオブジェクトや仮想空間での操作にかなり工夫が必要だった。ホロレンズ2では、少なくとも両指10本の動きの精細な認識ができることを披露した。
スペック表のヒューマンアンダースタンディングの項目には、ハンドトラッキングの説明として「Two-handed fully articulated model, direct manipulation」という表現がある。
4. 仮想空間のオブジェクトを押したり、触れたりが可能に
仮想空間上のスイッチを操作する様子。みたところ、特殊なジェスチャーをしてるようには見えず、そのまま「スイッチを触る」ようにして動かしている。
空中に浮いたキーボードを弾くデモ。ただ、レスポンス的に音楽を奏でることは非常に難度が高いためか、デモではかき鳴らす程度だった。
また「10本の指」の認識以外に、3Dオブジェクトそのものに触れたり、ボタンのように手で「押す」といったこともできるようになる。
直感的な操作がサポートされることによって、初めて体験する人に教える際や、実際のサービスに実装する際にも、3Dオブジェクトを使った操作を、ごく自然な動作として組み込むことができる。
5. 装着時の快適性の向上
ゴーグルのように上に開いて視界を確保することが可能。開発中の頻繁な着脱や、作業中の着脱回数が減る。パブリックビューイング会場では、多くの既存ユーザーからのフィードバックを反映した結果だろうという声もあった。
発表会では「コンフォート性が3倍向上」といった言及もあったが、パブリックビューイングで評判が高かったのは、ゴーグル部分を上に90度持ち上げる「フリップアップ」ができることだ。
開発中などに、いちいちホロレンズ2本体を着脱する必要がなくなる。
6. 仮想空間をiOSデバイスやAndroidなどと共有が可能に
ホロレンズ2が、MRプラットフォームとして新たな一歩を歩み出すことを感じさせる1カット。キップマン氏がホロレンズ2を通して見ている青色の機械を、手前の女性がiPad Proを通して見ている。二人が、現実空間に置かれた3Dオブジェクトを、性能の全く異なるデバイスをまたいで「同じ位置」で共有できていることは驚きだ。
ホロレンズ2が、MRプラットフォームとして大きな一歩を踏み出すきっかけになりそうなのがこれだ。従来からホロレンズは、同一空間にいる複数台のホロレンズで、設置した3Dオブジェクトを「共有」することができた。
この共有の対応機器に、iOSデバイス(iPadなど)とAndroidデバイスも加わる。具体的には、「Azure Spatial Anchors」という新しいMRサービスを通じて、iOSの「AR Kit」、Androidの「AR Core」をサポートすることで実現する。
7. クラウドで演算した高精細3Dを表示する「Azure Remote Rendering」
エンジンを通常の10万ポリゴンの演算(左)と1億ポリゴンの演算(右)で表示しているところ。こういった細部の表現が必要な用途にはクラウドのパワーを使う。
ホロレンズは無線で、単体で動くデバイスのため、3D処理性能には最大10万ポリゴン程度という制約がある。従来はポリゴン数を間引くことで対応していたが、用途によっては精細な3Dオブジェクトを見られなければ意味がない、というケースもある。
ホロレンズ2では、マイクロソフトのクラウドAzureで演算した3Dオブジェクトを、ホロレンズにストリーミングすることで、ホロレンズ2の演算性能の制限を解決できるという。
8. サードパーティーがカスタムしたホロレンズを使用可能に
Trimble社が同日発表した、ホロレンズ2をヘルメットに組み込んだ「Trimble XR10」。産業の世界で陣地を広げるには、こうした用途に合わせたカスタムは必須になる。
産業用途からの引き合いのなかには、特殊な環境に対応させるべく、ホロレンズの装着方法などをカスタムする必要があるケースも。
そうした場合を想定して、新たに「ホロレンズ カスタマイゼーションプログラム」を用意する。最初のパートナーとして紹介されたTrimble社は、ホロレンズ2をヘルメットに組み込める「Trimble XR10」を発表した。
9. 環境認識機能だけを切り出した開発キット「Azure Kinect DK」登場
Azure Kinect。399ドルと比較的安価に、Azureのマシンビジョン(画像認識AI)を使ったサービス開発ができる専用ハードウェア。
マイクロソフトが開発してきた環境認識センサーであり、ホロレンズ2の環境認識を司る「Azure Kinect」を単体で切り出した開発キットも登場。ホロレンズ2の深度センサー、高解像度RGBカメラ、円形に7つのマイクを持つマイクアレイを、小型のボディーに詰め込み、Azureのコンピュータービジョンや音声認識技術を使ったサービス開発ができる。
価格は399ドル(約4万4000円)。アマゾンが2017年に発表済みの「AWS DeepLens」のAzure版といったところだが、環境認識をするためのセンサー類は、はるかにリッチだ。
この開発キットは、残念ながら初期出荷国がアメリカと中国のみと、非常に限定されている。また、公式FAQによると、Xboxシリーズとの互換性はない。
10. プロセッサーはSnapdragon 850、バッテリー駆動時間不明
最後に、気になるのは性能だ。公開されたスペックシートはまだごく一部で、性能について不明な点は多い。心臓部であるSoC(System on a Chip、統合半導体)については、クアルコム製の最新「Snapdragon 850」だと明記している。
当然、次に注目が集まるのは「視野角・解像度2倍」の高性能化をした上で、バッテリー駆動時間と重量がどうなるのか。この点はパブリックビューイング会場でも気になると言う人が多かった。
午前2時から中継開始という、パブリックビューイング参加者の皆さん。日本各地から中継でパブリックビューイングを見ていた人たちもいた。
パブリックビューイング会場と現地を音声通話でつないで、発表会場の興奮を伝えたモバイルライターの中山智氏によると、現地でもホロレンズ2の発表会は非常に盛り上がり、会場に集まった世界中のプレスたちが心をつかまれていたという。
そもそも新型が出ることは既定路線だったが、マイクロソフトだけが世界の最先端を独創している複合現実デバイスにもかかわらず、多くの記者や専門家が想像した以上のアップデートだったということだろう。
「個人が買うにはまだちょっと高い(3500ドル、約39万円)が、これが一般ユーザーに落ちてくるように(価格帯に)なったら、スマホの次の時代が始まるんじゃないか」(中山氏)。
Business Insider Japanでは後日、ホロレンズ2の開発幹部インタビューも公開予定。
ホロレンズ2が、初代ホロレンズと比較してどこまで進化したのか。そして、実機の体験と、それによって実現される世界観の手触りはどんなものなのか。
いずれにしても、ホロレンズ2は間違いなく、MWC2019の最注目発表の1つになるだろう。
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