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概要:「ものづくり大国」の地位が揺らぐ日本だが、未だ世界トップシェアを誇るメーカーも存在する。村松フルート製作所もその1つ。製品を支える高い品質と技術はどのようにして生まれてきているのか。
下準備の段階ではあるものの、精緻な加工が求められる「外径切削・中グリ」作業。皆川さんは長年の経験で、コンマ数ミリの違いが感覚で分かるという。
では、世界有数のシェアをもつフルートメーカーに提供される田中貴金属の金のパイプは、一体どのようにして生まれているのか? 驚くことに、このハイテクの時代にあって、実はハンドメイドでしかつくることができないという。その理由は、溶接をしないシームレス管という特殊な管で、しかも特別な精度が求められるからだ。
田中貴金属の富岡工場 ターゲット加工セクション・圧延伸管セクション チーフマネージャーの田村修一氏はこう話す。
「溶接した管の場合、溶接で溶け出した金属組織が異なってしまいます。また溶接による欠陥がでることもあり、村松フルートさんの要求する品質に応えられないんです。そのため、当初からシームレス管を納品しています」
「ミクロンメートル単位の要求に応える」卓越した職人技
切削された金管を薄く、均一に引き延ばす作業を行う皆川さん。「常に最高のものを作りたい。技術向上に終わりはない」と真摯に話す。
シームレス管の製造工程は、まず素材となる貴金属を溶解・鋳造して円柱状のインゴット(鋳塊)を製造する。このインゴットを外周が真円になるように削り、さらに中心部分も「中グリ」という作業で真円にくりぬいて管状に加工する。この下準備ともいえる工程でさえ、田中貴金属のこだわりがある。
「この段階で精度の高い仕上がりでないと、完成品も精巧で美しく、耐久性のあるものにならない。担当者が真円になっているか、管の厚みは一定かなどコンマ数ミリ以下の単位で調整しています」(田村氏)
手切削後の金管は、まだフルートとして使われる管の数倍の太さと厚みがある。この管を「伸管(ドローベンチ)」という作業で引き延ばしていく。といっても一度に引き延ばすのではなく、少しずつ径を小さくして引き延ばしていく。この作業は十数回にもなる。
通常、ロットの大きな商材は、切削や伸管といった作業をオートメーションで行い生産性を高めるが、村松フルート製作所に納品するシームレス金管は、すべて人が機械を操作して行っている。全工程にわたり微妙な加減が必要なため、熟練した技術が求められるからだ。 実際に田中貴金属でこの作業を担当している富岡工場 圧延・伸管セクションの皆川雅裕氏は「手切削ではコンマ数ミリ単位、伸管作業はミクロンメートルでの精度が要求されます。経験による感覚的なものも使って、規格どおりに仕上げていきます」という。
数値化できない「感性の世界」の品質
金管に蛍光灯の光を差し入れる検品作業。
光が屈折せず、真っ直ぐ差し込んで入れば歪みがないと判断する。
デジタルやIT技術がここまで進んだ中、なぜアナログな経験則も重要になってくるのか。ここで田中貴金属と村松フルートが半世紀以上かけて高めてきた品質がポイントとなる。 田村氏は「当然、村松フルートさんから品質についてのフィードバックがあるわけですが、楽器や音楽は感性の世界なので、これが数値では出てこないことも多い。そこでフルート業界の検査の方法などを教わって品質管理に導入し、なにかあれば技術開発に反映させてきた」と経緯を語る。
例えば、伸管が終わり規定の長さにカットした金管は全品チェックを行って納品している。その中に、管を蛍光灯に向けて、管の中に光を映し入れるという目視検査がある。光が一直線に差し込んでいれば歪みがなく、加えて光の輪が見えれば真円ということになる。この検査方法はフルート業界で行われている作業で、田中貴金属の富岡工場にはこの検査のためだけに専用の蛍光灯が設置されていた。
フルートはどのようにして完成するか
村松フルート製作所の社屋。ここから世界トップシェアのフルートが誕生する。
村松フルート製作所の工房。田中貴金属から納品された段階ではただの管も、フルート工房の職人たちの手にかかれば、またたく間に楽器に変わっていく。
(左)金管に穴を開け、その部分を引き上げてトーンホールを作る。立ち上がった先端部分はきれいにカールするよう処理される。(右)トーンホールの先端がきれいにカールするのは、長年をかけて蓄積し磨き上げてきたテクノロジーと作業する人の技量が融合してこそのもの。
続いてキイ・メカニズムを組み込む作業。寸分の狂いもなく可動するよう、幾度となく調整しながら組み込んでいく。
髪の毛ほどの隙間も許されないトーンホールとキーパッドの接触部分。この工程では厚さ0.01ミリのフィルムを使って隙間がないことを確認する。このほか、細いLEDライトを管内に差し込み、隙間から光の漏れがないかをチェックしながら調整をする作業がある。
精緻な金管が、繊細で美しいフルートに組み立てられていく最終工程。実際に音を出しながら「聴覚」・「触覚」・「視覚」の三方向から調整を重ね仕上げていく。
「完成して終わり」ではない製品の難しさ
こうして手間をかけて製造されたゴールド管が村松フルート製作所に納品され、フルートとして加工されていく。
村松フルート製作所ではゴールド素材以外のものも含め年間5400本ほど、1日に22〜23本のペースで新しいフルートが誕生する。村松氏は言う。「フルートは製造すればそれで完成ではない。答えが出るのが数年後だったりする。精密さが必須の楽器なので品質の悪い素材を使えば少しの歪みでも音に変化があり、管体が割れることもある」
村松フルート製作所での精巧な加工はもちろん、そもそもの素材となる金属管の質が数年後の完成度に大きく影響するわけだ。
「長い年月をかけて築き上げた信頼関係。田中貴金属は良きパートナー」と村松社長。
国内外も含めて金属管を提供しているメーカーは数多くある。田中貴金属以外のメーカーからの納入を検討しないのかと、村松氏に聞いたところ「田中貴金属さんはグローバルに貴金属を取り扱っている企業ながら、少ないロットの場合でも高い品質の要求を受けてくれる。これは、特に海外メーカーなどではあり得ないこと」と即答があった。
村松フルート製作所の職人たちの中には、自らがフルートを吹き、海外留学をもするような音楽家たちもいれば、工業系の学問を修めた根っからのエンジニアもいる。それぞれの個性と得意を生かしながら、皆が目指しているのは、後世に恥じない楽器づくりだ。
「楽器は長く生きるもの。数十年後に『さすがムラマツフルート!』と評され、当社の未来の職人たちがそれを誇りに思える楽器を、丁寧に心をこめて作り上げていきたい」(村松氏) 国産フルートの生みの親である創業者の思いが、いまも同社の理念として生き続けている。 そして、こうした手仕事だけが生み出せる工芸品的クラフトマンシップの「伝統技術」を「産業の目線」で解釈して寄り添う田中貴金属もまた、世界に愛されるフルートづくりのメンバーとして誇りを持ち続けている。
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