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概要:この6年余り、日本の景気は「良い」ことになっていた。戦後最長の景気拡大になった可能性がある、とも。「そんな実感はない」という人が大半なまま、終わってしまいそうだ。
「そんな実感はない」という人が大半なまま、ダラダラ続いてきた「好景気」。いつの間にやら終わってしまいそうだ。
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この6年余り、日本の景気はずっと「良い」ことになっていた。戦後最長の景気拡大になった可能性がある、とも。「そんな実感はない」という人が大半なまま、ダラダラ続いてきた「好景気」だったが、いつの間にやら終わってしまいそうだ。
「すでに景気後退」の見方が急浮上
企業の生産活動、個人消費、雇用といった経済指標を合成して算出し、景気の現状や先行きを総合的に示す「景気動向指数」が悪化。「すでに景気後退局面に入っている可能性がある」という見方が急浮上した。
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「景気は2018年秋にピークを迎え、すでに後退局面に入っている可能性がある」
大手メディアは2019年3月初め、そんな見方が急浮上していると一斉に報じた。
きっかけは、3月7日に内閣府が発表した1月の「景気動向指数」。企業の生産活動、個人消費、雇用といった経済指標を合成して算出し、景気の現状や先行きを総合的に示す指数だ。
1月は、景気動向指数のうち「景気の現状」を示す「一致指数」が3カ月連続で悪化し、2013年6月以来の低い水準に沈んだ。その結果、指数の動きによって機械的に決まる「景気の基調判断」が、それまでの「足踏み」から「下方への局面変化」に引き下げられた。
この表現は、事後的に公表される「景気の山(ピーク)」が、それ以前の数カ月にあった可能性が高いことを示す。つまり「過去数カ月の間に景気は後退局面に入った可能性がある」ことを意味する。
景気の「山」の時期は正式には、専門家でつくる内閣府の「景気動向指数研究会」がさまざまな経済指標を精査して1~1年半後に判定するまで確定しない。
景気後退ムードの火消しに躍起
政府は1月末、安倍政権が発足した2012年12月に始まった今回の景気回復期間がこの月で74カ月に達し、「戦後最長になったとみられる」(茂木敏充経済財政相)と宣言したばかり。景気動向指数の発表当日の記者会見では、茂木氏が「『下方への局面変化』となっても、後退局面と判定されなかった例は過去にもあった」と強調。にわかに広がった景気後退ムードの火消しに躍起だった。
しかし3月20日に公表された、景気の現状に関する政府の公式見解にあたる「月例経済報告」は、景気の総括判断を「緩やかに回復している」から「このところ輸出や生産の一部に弱さもみられるが、緩やかに回復している」に下方修正。景気回復が続いているという認識こそ変えていないが、2016年3月以来、3年ぶりに総括判断を引き下げた。
日本経済が今、潮目を迎えているのは間違いない。
「中国ショック」で輸出・生産が悪化
中国経済にブレーキがかかり、日本からの輸出が打撃を受けた。
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景気の足元がふらついている最大の要因が「中国ショック」だ。
もともと減速傾向だった中国経済に2018年秋以降、アメリカによる中国からの輸入品に対する追加関税の大幅な拡大が追い打ちをかけた。
中国の景気の冷え込みに伴い、半導体関連や産業用ロボットの中国での販売が減るなどして、2019年1月以降、業績予想を下方修正する日本企業が相次いだ。
「11月、12月に尋常でない変化が起きた」
中国で自動車や家電向けのモーターの売れ行きに急ブレーキがかかったとして1月17日、2019年3月期の業績予想を大きく下方修正し、記者会見に臨んだモーター大手・日本電産の永守重信会長の発言は市場関係者に衝撃を与えた。
1月の経済指標では、主に中国向けの落ち込みが響いて輸出が前年同月比8.4%も減り、2カ月連続のマイナスに。企業の生産活動の活発さを示す「鉱工業生産指数」も3カ月連続で低下。
単純化して言えば、中国ショックを受けて輸出がふるわず、国内での生産活動が低調になったことが景気動向指数の悪化を招いた、というわけだ。
個人消費は堅調、中国も2019年後半に持ち直しか
中国は減税やインフラ投資といった景気対策を打ち出しており、2019年後半ごろから再び上向くという予想も目立つ。
REUTERS/Mark Schiefelbein/Pool
一方、明るい材料もある。
中華圏の企業が一斉に長い休みに入る春節(旧正月)は旧暦に基づくため、毎年時期がずれる。2018年は2月中旬だったのに対し、2019年は2月初めだったので、前年に比べ1月に企業活動が停滞する傾向が強かったとみられる。
春節の休みが終わると反動で中国への輸出が増えやすくなるのが例年の傾向だ。実際、財務省が3月18日に公表した2月の貿易統計によると、中国向けが盛り返し、輸出全体ではマイナスだったものの減少幅は1.2%まで縮まった。
2月の鉱工業生産指数の速報値は3月29日に公表されるが、事前予想では「ある程度は持ち直す」との見方が多く、「今後もどんどん落ち込む」といった見方は現時点ではほとんどない。
中国は減税やインフラ投資といった景気対策を打ち出しており、2019年後半ごろから再び上向くという予想も目立つ。
輸出や生産以外に目を転じると、景気を左右する個人消費は底堅い。
SMBC日興証券が政府の消費関連統計やスーパーやコンビニの売上高といった各種データを総合的に分析したところ、個人消費は1月以降も堅調だ。
10月に消費税率が10%に引き上げられるのを前に「駆け込み需要」が見込まれ、増税後の景気落ち込みを防ぐための「キャッシュレス決済時の5%還元」といった2兆円規模の経済対策も一定の効果が期待される。
「え、そうだったの?」で終わる「好景気」
「戦後最長」を更新したかどうかにかかわらず、今回の景気拡大が盛り上がりを欠き、多くの人がその恩恵を実感できないまま終わるという事実は動かない。
撮影:今村拓馬
とはいえ不安要因も残る。
景気拡大が7月まで続けば丸10年に及ぶアメリカ。さすがに息切れの兆しも出ているうえ、2019年後半にはトランプ政権が導入した企業向け大型減税の効果が薄れ、景気には逆風となる。
米中貿易戦争の行方も予断を許さない。一時は「3月末の米中首脳会談で決着」との楽観論が広がったが、両国の意見対立が解けないまま協議が続いており、いつ、どのように着地するかはなお流動的だ。
欧州でも景気減速の傾向が強まるなか、イギリスの欧州連合(EU)離脱を巡る混迷が続いている。海外の経済が失速すれば、日本への影響は避けられない。
日本経済が直近の「ショック」を乗り切ったとしても、「景気の先行きに警戒が必要な状況が続く」(SMBC日興証券の宮前耕也・日本担当シニアエコノミスト)のは間違いない。
日本経済研究センターが2019年3月18日に公表した「ESPフォーキャスト調査」によると、調査対象のエコノミストのうち、日本がすでに景気後退に陥っていると見る人は13.9%。その人たちも含め、東京五輪がある2020年7~9月期までに景気が後退に転じると見る回答者は61.1%に達した。
8割が景気実感ないまま終焉
すでに述べた通り、最近の経済指標の動きは微妙で、「戦後最長の景気拡大」が幻に終わったのかは当分はっきりしない状態が続くだろう。
しかし「最長」を更新したかどうかにかかわらず、今回の景気拡大が盛り上がりを欠き、多くの人がその恩恵を実感できないまま終わるという事実は動かない。
2013~18年の実質国内総生産(GDP)の成長率は年平均で1%弱にとどまり、5%を超えた1986~91年のバブル景気などとの差は大きい。少子高齢化による人手不足の影響もあり雇用情勢は大きく改善したものの、総じて見れば働き手の賃金水準は伸び悩む。
日本経済新聞が3月22~24日に実施した世論調査では、景気回復を「実感していない」と答えた人が82%にのぼった。
多くの人にとって「え、そうだったの?」という印象しかない「好景気」は幕を閉じ、日本経済は試練の時を迎える。
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