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概要:仮想通貨が注目を集めた2017年ごろ、「既存の金融システムは過去のものになる」とも言われたレガシー送金インフラが、じわじわと攻勢を強めている。
Shutterstock.com
仮想通貨(暗号資産)の価格が急上昇していた2017年後半、関係者たちから「既存の金融システムは過去のものになる」という声を繰り返し聞いた。
当時、送金に時間がかかるのに高い手数料を取る「レガシー金融システム」の代表と言われたのが、日本のメガバンクや国際送金のインフラを担うSWIFT(国際銀行間通信協会、Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication)だった。
しかし、世界的に仮想通貨の価格が低迷し、その将来に疑問が生じているいま、SWIFTはじわじわと攻勢を強めている。
銀行間でメッセージを送るシステム
SWIFTのアジア・太平洋地域の決済などを統括するマイケル・ムーン氏。
撮影:小島寛明
金融機関に勤めているか、会社で海外への送金を担当していない限り、SWIFTにはあまりなじみがないのではないか。
アジア・太平洋地域の決済などを統括するマイケル・ムーン氏はこう説明する。
「世界の金融機関とつながることのできるプラットフォームだ。プラットフォーム上では、多くの金融業務を行うことができる」
銀行と銀行をつないでメッセージを送受信するのが、SWIFTの基本的な機能とされる。
日本の横浜にある銀行の支店から、アメリカのサンフランシスコにある銀行の支店に送る際、誰の口座から、いくら送金をするのか、お金を受け取る人は誰かといったメッセージを送る。
世界中の1万1000を超える銀行や証券会社がSWIFTのネットワークにつながっている。日本でも約250の金融機関がSWIFTに参加している。
SWIFT送金は本当に「遅い」のか?
SWIFT JAPANで、日本のカントリーマネージャーを務めるアラン・デルフォッセ氏。
撮影:小島寛明
仮想通貨の登場とともに、既存の送金システムに対して、いくつかの疑問が生じた。そのひとつが、「SWIFTは遅い」というものだ。
しかし、日本のカントリーマネージャーを務めるアラン・デルフォッセ氏はこう反論する。
「実際には、送金全体の40%が5分以内に完了している。かつては、海外に送金するのに3日間かかることもあった。また、送金中はお金がどこにあるのかもわからなかったが、『SWIFT gpi(global payments innovation、後述)』ですべてのプロセスを見える化した」
SWIFT上では、東京からニューヨークやロンドンへのメッセージ送信は、わずか2〜3秒で完了するという。送金に時間がかかるのは、システムそのものよりも手続きが原因だと、2人の幹部は説明する。
海外に送金する際、世界の金融当局が各金融機関に強く求めている「KYC」という言葉がある。“Know Yor Customer”の略で、顧客の身元確認のことだ。
誰が、誰に対して送金をするのかを金融機関にしっかり把握してもらうことで、マネーロンダリング(資金洗浄)や、テロ組織への送金を防ぐ狙いがある。顧客の身元がはっきりしないなど「疑わしい」場合は、当局への報告も求められる。
顧客は誰か、金額が正確か、円をドルに換算するといくらかかるかといった確認作業や、銀行内の決済手続きが必要だからこそ、送金に時間がかかっていたというわけだ。
デルフォッセ氏が触れたSWIFT GPIは、送金のスピード、透明性、追跡性を高めることを目指す新しい業界標準のことだ。
SWIFTはこの数年、世界中の金融機関に対してgpiの導入を勧めている。
SWIFTは「手数料が高い」のか?
SWIFT
次は、「SWIFTは手数料が高い」との疑問だ。これについてもデルフォッセ氏は、SWIFTが原因ではないと主張する。
「日本のトランザクションコストは国際的にも高い。歴史的に、SWIFTと銀行内のシステムをつなぐ役割をITベンダーが担ってきた。その部分のコストで、送金手数料が高くなっていた面がある」
SWIFT gpiの導入によって、すべての国際送金が、中継する金融機関も含めて追跡可能になることで、手数料も含め透明性を高める狙いがある。
マネーロンダリングなどの不正を防ぐ仕組みも、強化しているという。
極端な例ではあるが、日曜日にもかかわらず高額の送金が初めて行われようとしている場合、システムが警告を発する。少額の送金を何度も繰り返しているといった場合も、警告が出ることがある。
送金のパターンを分析し、いつもと違うときは、不正の可能性があるとシステムが判断するという考え方だ。
「当面、ブロックチェーンには置き換わりそうもない」
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世界の送金インフラを担うSWIFTから、日本の金融業界はどう見えているのだろうか。ムーン氏はこう指摘する。
「日本の金融機関は、技術については非常に強固な城壁で守られている。しかし、この城壁は簡単に取り替えることができない。マーケットは、もっともっと迅速に、コストを下げながら変化してほしいと期待している」
世界を見渡すと、仮想通貨の普及は着実に進んでいるとは言えない状況だが、一方で(仮想通貨を支える技術である)ブロックチェーンを活用するプロジェクトの開発は勢いを増している。
SWIFTも、ブロックチェーンをどう活用するかについて、研究を続けている。2019年3月にはシンガポールで、ブロックチェーンを含む「分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology、略称DLT)」を株主総会に活用する実験を始めると発表した。
株式市場に上場している会社には大勢の株主がいる。株主総会で意思決定をする際には、それぞれの株主が議決権を行使するため、手間がかかる。
この手続きをDLT上で簡素化するのが実験の狙いだ。
近い将来、SWIFTのネットワークがブロックチェーンに置き換わる未来はやって来るのだろうか。ムーン氏に疑問をぶつけてみると、こんな答えが返ってきた。
「45年ほど業界を支えてきたが、いまのところ、そういったことは起きていない。わたしたちは、現実の課題に対する、現実的な解決策を提示してきた。簡単に変わるものではないが、安心しきっているわけでもない」
(取材・文:小島寛明)
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