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概要:米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、先週開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で資産買い入れの減速(テーパリング)ペースを毎月300億ドルへ倍増することを決定し、利上げの前倒しを示唆した背景として、一般物価の高騰が「想定以上」に長期化している点を指摘した。
井上哲也
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[東京 20日] - 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、先週開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で資産買い入れの減速(テーパリング)ペースを毎月300億ドルへ倍増することを決定し、利上げの前倒しを示唆した背景として、一般物価の高騰が「想定以上」に長期化している点を指摘した。
米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は、先週開催した米連邦公開市場委員会(FOMC)で資産買い入れの減速(テーパリング)ペースを毎月300億ドルへ倍増することを決定し、利上げの前倒しを示唆した背景として、一般物価の高騰が「想定以上」に長期化している点を指摘した。その背後で、住宅価格は一層顕著な上昇をみせている。井上哲也氏のコラム。写真は米カリフォルニア州の新築住宅。2019年7月撮影(2021年 ロイター/Mike Blake)
その背後で、住宅価格は一層顕著な上昇をみせている。代表的な指標であるケース・シラー指数でみると、直近(9月)の前年比上昇率は約20%と、前回の住宅バブル時のピークであった2005年末の15%弱をも上回る歴史的なペースとなった。
<住宅値上がりの構造変化>
住宅価格の高騰の背景には当初、コロナの影響による供給制約に注目が当たっていた。つまり、木材などの資材や建築従事者、住宅販売担当者の確保が難しくなった一方、財政支援と巣ごもりで購買力を増した家計の需要に対応できず、需給のミスマッチが生じていたという理解である。
実際、住宅価格の上昇が加速し始めたのは昨年春であり、コロナ感染が本格化した時期と一致している。この間、中古住宅販売も、昨年後半にはコロナ前より年率100万件以上高い600万件後半で推移した中で、業者在庫は2カ月分を割りこむなど「在庫払底」に近い状況となった。
ただし、一般物価の高騰が今年も続く中で、今年初夏には前年比で50%を超える急上昇を示していた木材価格も足元で急減速し、10月の上昇率は6%強だった。また、雇用統計が示す平均時給の上昇率も、建設業は11月に前年比4%強にとどまり、他の産業よりも抑制的となっている。
住宅価格が急騰したことで、住宅の購入しやすさを示す「アフォーダビリティ指数」も本年入り後に急低下を示してきた。住宅借り入れの新規購入指数も「アフォーダビリティ指数」と同様に本年入り後に低下傾向をたどってきた。
このように供給側の問題が緩和しつつあることは事実としても、需要側の要因には今後の持続性を有するものが少なからず存在する。
まず、財政支援が終了した後も、家計の所得は雇用と賃金の拡大を映じて力強く拡大している。直近(第3四半期)の雇用者所得と自営業収入の合計増加額は3300億ドル強とコロナ前の2倍近い水準に達している。
加えて、昨年以降に蓄積された「超過」貯蓄は、コロナ前の平均的な水準に比べて累計で10兆ドル近くに達している。
さらに、FRBのテーパリングにもかかわらず住宅ローン担保債券の利回りは低位で安定しており、結果として30年固定の住宅貸出金利も足元(12月初め)で3%強と歴史的な低水準を維持している。実際、住宅借り入れの借換え指数は本年央をボトムに急反発をみせている。
<FRBの楽観的スタンス>
もちろん、FRBも住宅価格の高騰には注意を向けている。例えば、FOMCの議事要旨には、本年夏以降にテーパリングの内容を議論した中で、住宅借入金利の過度な低下を防ぐ観点から、住宅ローン担保債券の買い入れを米国債の買い入れよりも早いペースで減速すべきとの議論があったことが示唆されている。
もっとも、FOMCの議事要旨だけでなく直近(11月)の金融安定報告を見る限り、少なくともこれまでは、今回の住宅価格の高騰が深刻な問題であるとは考えていないようだ。
最大の理由として挙げられているのは、家計の住宅債務の負担が抑制されている点である。可処分所得に比べた債務残高の比率は足元で100%を割り込み、リーマンショック直前の130%台から顕著に低下しているほか、金利低下の恩恵もあって利払い負担も相対的に小さい。先に見たように、家計の所得や資産の増加を背景に住宅需要が高まるのであれば、それ自体は健全な動きである。
同時に、住宅債務を増やしているのは相対的に与信スコアの高い家計であり、2005─07年に問題となった「サブプライム」の借り入れ増加は相対的に抑制されているとみられている。同様に、前回局面でストレスの源泉となった「ホームエクイティローン」(住宅価格の上昇による担保価値の上昇を活用する消費者ローン)にも目立った動きは見られない。
<待ち構えるリスク>
しかし、FRBのこうした理解が正しいとしても、今後については必ずしも楽観視すべきでない。
金融面で注意すべきなのは、投機的な需要のリスクである。先に見たように住宅価格が実需を背景に上昇しているのであれば問題は少ないし、価格があまりに高騰すれば需要が減退することで、過熱を抑制する効果も期待できる。
一方で、FRBによる金融正常化にもかかわらず長期金利の上昇が抑制される下で、一般物価の高騰の下での「実物資産」の優位性に焦点が集まれば、投機資産としての住宅の魅力度は高まりうる。価格高騰を踏まえて投機的な動きが拡大すれば制御は難しく、価格が下落した場合の投げ売り等を通じたストレスも大きくなる。
住宅問題については、政治問題化しやすい点にも注意する必要がある。特に格差是正や弱者救済を重視する現在の民主党政権は、一般物価の高騰が経済的弱者の経済厚生を毀損(きそん)する点に懸念を示すのと同様に、住宅価格の高騰が住宅の取得を困難にするだけでなく、家賃の上昇を通じて借家住まいの人々にも影響を与える点に懸念を示すことが想定される。実際、消費者物価指数で住居費をみると、11月には前年比で4%近い上昇になっている。
これらのリスクが顕在化しても、一般物価に加えて住宅価格の抑制も大義名分に加わるという意味で、FRBがこれから進める金融政策の「正常化」にとってむしろ好都合ではないかとみえるかもしれない。
しかし、住宅価格の高騰が問題なのであれば、それは第一義的には金融監督(FRBがかねて使用する用語によれば「第一線防御」)によって対処すべき筋合いにある。
実際、「ドット・チャート」が示唆するような極めて緩やかなペースでの利上げでは、住宅価格の抑制はおろか、その前提となる長期金利の相当な上昇すら期待できない。逆に言えば、住宅価格の抑制に有効なほどに政策金利を引き上げれば、実体経済と金融市場に深刻な副作用をもたらす懸念がある。
この点について、FRBはもちろん理解しているはずだ。それでも筆者が懸念を持つのは、米国では金融監督だけでは住宅価格を有効に制御しえないリスクが残る点だ。FRBが銀行に対してリスク管理の強化を求めても、はるかに規模の大きなシャドーバンキングが潤沢な資金を供給しうる。
また、金融安定上の重要な施策は他の監督当局を含めた「金融安定監督評議会(FSOC)」という合議体で決定する必要があり、意思決定が遅延しやすい面もある。
これらの点を踏まえると、住宅価格の高騰も「想定外」に長期化し、その抑制が焦点になった場合、FRBは金融政策をこの目的にも活用するかどうかという悩ましい状況に陥る恐れがある。来年の利上げペースを予想する上では、住宅価格の動向にも注意を向けることが必要だ。
編集:田巻一彦
*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*井上哲也氏は、野村総合研究所の金融イノベーション研究部シニア研究員。1985年東京大学経済学部卒業後、日本銀行に入行。米イエール大学大学院留学(経済学修士)、福井俊彦副総裁(当時)秘書、植田和男審議委員(当時)スタッフなどを経て、2004年に金融市場局外国為替平衡操作担当総括、2006年に金融市場局参事役(国際金融為替市場)に就任。2008年に日銀を退職し、野村総合研究所に入社。金融イノベーション研究部・主席研究員を務め、2021年8月から現職。主な著書に「異次元緩和―黒田日銀の戦略を読み解く」(日本経済新聞出版社、2013年)など。
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