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概要:[東京 1日] - ロシア軍によるウクライナへの攻撃が続くなか、2月24日、25日のNY市場では、米株価が大幅に上昇した。背景には、1)ロシア―ウクライナ情勢の不透明感が増すなかで、米連邦準備理事会(FRB)が急激、かつ大幅な利上げを行うとの見方がやや後退した、2)米政府がロシア産のエネルギー輸出を制裁の対象にしない方針を示したため原油価格が反落した、3)ロシアのプーチン大統領がウクライナとの交渉を承認する用意があると述べたとの報道があった、などがあるようだ。ただ、こうした市場の反応は、やや楽観的過ぎるようにも見える。
尾河眞樹 ソニーフィナンシャルグループ 執行役員兼金融市場調査部長
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[東京 1日] - ロシア軍によるウクライナへの攻撃が続くなか、2月24日、25日のNY市場では、米株価が大幅に上昇した。背景には、1)ロシア―ウクライナ情勢の不透明感が増すなかで、米連邦準備理事会(FRB)が急激、かつ大幅な利上げを行うとの見方がやや後退した、2)米政府がロシア産のエネルギー輸出を制裁の対象にしない方針を示したため原油価格が反落した、3)ロシアのプーチン大統領がウクライナとの交渉を承認する用意があると述べたとの報道があった、などがあるようだ。ただ、こうした市場の反応は、やや楽観的過ぎるようにも見える。
ロシアをSWIFTから排除したことによって、世界経済にも少なからず影響が及ぶと思われる。尾河眞樹氏のコラム。写真はドル、スイスフラン、円、ルーブルなどの紙幣。ワルシャワで2011年1月撮影(2022年 ロイター/Kacper Pempel)
<効果的な制裁、経済へのダメージ大きく>
米国、英国、欧州、カナダは2月26日、ロシアの大手銀行などを国際銀行間通信協会(SWIFT)の国際決済網から排除することを決定した。また、ロシア中銀に対しても制裁を科し、外貨準備を使った通貨防衛策を困難にさせるという。さらに、米国、欧州、英国、カナダ、日本政府はロシアのプーチン大統領の個人金融資産凍結を決定。これまでよりも圧倒的に厳しく、効果的とみられる制裁に乗り出したことは評価できる。
これによるロシア経済へのダメージは大きいだろう。格付け会社S&Pグローバルは25日、ロシア国債をトリプルBマイナスから、投機的水準にあたるダブルBプラスに引き下げた。ロシア国債、ロシア株、通貨ルーブルと、トリプル安の展開は当面続きそうだ。ルーブルは既に対ドルで、侵攻開始直後に一時16%程度売り込まれ、その後いったん持ち直した。しかし、ロシアへの厳しい制裁による経済への影響が現れるのはこれからであることを踏まえれば、ルーブルは今後一段と下落する公算が大きい。
ロシアは2014年のクリミア危機以降6306億ドルまでコツコツと積み上げてきた外貨準備を使って、為替介入等で通貨防衛を図るだろうが、SWIFTから排除され、中央銀行への制裁も加えられるとなると、それも極めて困難だろう。ロシアの1月の消費者物価指数(CPI)は前年比8.73%と加速しており、通貨安によってインフレに拍車がかかれば、高インフレを伴う景気悪化、いわゆるスタグフレーションに見舞われることになるとみている。
<副作用にも警戒必要>
一方で、今回ロシアをSWIFTから排除したことによって、世界経済にも少なからず影響が及ぶと思われる。例えば、上述した通り、米政府は「ロシア産のエネルギー輸出を制裁の対象にしない」としている。しかし、欧州がロシア産の天然ガスの輸入代金をSWIFTで決済できないとなれば、天然ガスの欧州への供給に影響が及びかねない。これまで欧米、特にドイツが厳しい制裁に二の足を踏んでいたのはこのためだ。
他には、ロシア向け与信の返済が滞るなどの影響が考えられよう。国際決済銀行(BIS)による各国金融機関の対ロシアのエクスポージャーを国別にみると、特にフランスとイタリアがそれぞれ250億ドル相当(約2.8兆円)と、米国の約2倍、日独の約3倍の規模となっており、相対的に大きい。クリミア危機以降、西側諸国の金融機関はいずれもロシアへの与信残高を大きく減らしているため、今のところ影響は限定的との見方が主流だが、警戒を強めておく必要がありそうだ。
また、ロシア債の保有者の上位には、米欧の大手資産運用会社や金融機関の名前が並ぶ。ロシアは1998年、ロシア財政危機の際にデフォルトを経験している。当時は原油価格の下落によるロシアの財政悪化やアジア通貨危機の余波を受けた世界的な景気減速などが背景にあった。現在は原油安でもなければアジア通貨危機も起こっておらず、環境も異なるため単純に比較はできない。当時のロシアの外貨準備高は今の4分の1程度しかなく、ロシア当局は為替介入も続けられなかった。ただ、今回も西側諸国の強力な制裁によりトリプル安が続くのであれば、ロシア財政は危機に晒されることになるだろう。
<売られる通貨、ユーロのほかにも>
上述した不透明感や、そもそも地理的な近さもあり、ウクライナ侵攻によって通貨ユーロは対ドル、対円で一時大きく下落した。今のところ2%程度下落した後に持ち直しているが、今後、ロシア制裁の反動で欧州経済への影響が出始めれば、ユーロは更に下落する可能性がある。
仮に原油価格の上昇が続き、ユーロ圏のインフレが加速する場合には、欧州中銀(ECB)が金融引き締めに舵を切る可能性も排除はできない。ただ、ユーロ圏のインフレはその要因のほとんどが原油価格の上昇と供給制約によるコストプッシュインフレである。利上げすれば、ユーロ高によって輸入インフレを抑制する効果は得られる可能性があるものの、米国も利上げサイクルに入るなかで、ユーロが確実に上昇する保証はない。スタグフレーションのリスクを踏まえれば、金融引き締めに踏み切る可能性は今のところ低いように思われる。
その他、主に売られやすい通貨というと、新興国の中でも、原油輸入依存度の高い国が挙げられよう。例えばトルコ、南アフリカ、インドなどは、それぞれの通貨が既に弱含んでいるが、今後さらに下落するリスクは高いとみている。南アフリカは金価格の高騰が経済にとってプラスではあるものの、基本的には市場心理の悪化に対して脆弱であり、目先はドルや円に対しては下落しやすいのではないか。
<有事に強い3つの通貨>
上昇する通貨といえば、ドル、円、スイスフランなどが挙げられよう。それぞれの名目実効為替レートをみると、今回のウクライナ侵攻でも同様の傾向がみられた。1994年から2016年までのドル、円、スイスフランの名目実効為替レートを見ると、1998年のアフガニスタン空爆や、2001年の米同時多発テロの後の有志連合軍によるアフガニスタン空爆の際などもそうであったように、戦争の時には、軍事力の観点からドルが最も強くなり、また永世中立国であるスイスフランも同時に上昇する傾向がみられる。
その他の有事では、例えば2008年のリーマンショックや、2010年のユーロ圏の債務危機などの金融ショック、また、2016年のBrexitショックなどのように、戦争以外でグローバルな株価急落を伴うケースは、ドルやスイスフランも上昇する一方、円がこれらの通貨よりも強くなる傾向がみられる。
今回の有事においても、ドルと円は力関係が綱引きになりやすく、ドル円は一方向のトレンドを描く相場とはなりにくい。ロシア制裁による世界経済への影響や、原油価格の上昇による景気悪化懸念から、グローバルに株式市場が下落する展開となれば、まずはいったんドル円では円高が進むだろう。しかし、米国の金利先高観と、原油高による日本の貿易収支悪化の可能性などを踏まえると、その後はドル円でもドル高が進む可能性が高いとみている。
ソニーフィナンシャルグループでは、米国の利上げは年内、3月、5月、6月、9月、12月の5回で、それぞれ25Bps(ベーシスポイント)ずつの利上げ幅を予想しており、ウクライナ侵攻を受けても、今のところその見通しは変えていない。ただ、今回の有事によって、今後の米金融政策は一層不透明になったと言えよう。特に、今後の経済見通しやドットチャートが公表される3月15、16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)までは不透明感が続きそうだ。それまでは、ウクライナ情勢の関連報道や米経済指標などで市場が一喜一憂し、ボラティリティが高い状態が続くのではないか。一日も早い事態の終息を願うばかりである。
(編集 橋本浩)
*本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
*尾河眞樹氏は、ソニーフィナンシャルグループの執行役員兼金融市場調査部長。米系金融機関の為替ディーラーを経て、ソニーの財務部にて為替ヘッジと市場調査に従事。その後シティバンク銀行(現SMBC信託銀行)で個人金融部門の投資調査企画部長として、金融市場の調査・分析、および個人投資家向け情報提供を担当。著書に「本当にわかる為替相場」「為替がわかればビジネスが変わる」「富裕層に学ぶ外貨投資術」などがある。
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