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概要:スイス当局はクレディ・スイス・グループの約160億スイス・フラン(約2兆3000億円)に上る「その他ティア1債(AT1債)」(偶発転換社債=CoCo債)の価値をゼロとした決定を擁護した。債権者に対し、文書の中でリスクは警告されていたと説明した。
UBS買収に伴う緊急政令で損失条項発動、債券の目論見書に明記
AT1債、スイスでは株主資本が使い果たされる前に価値切り下げ
スイス当局はクレディ・スイス・グループの約160億スイス・フラン(約2兆3000億円)に上る「その他ティア1債(AT1債)」(偶発転換社債=CoCo債)の価値をゼロとした決定を擁護した。債権者に対し、文書の中でリスクは警告されていたと説明した。
UBSグループによるクレディ・スイスの緊急買収では、UBSが被る可能性のある一部損失に対する保証や、スイス国立銀行(中央銀行)の流動性供給枠が設定された。
これらの保証を可能にした緊急政令の制定は、債券の目論見書に記載のある「存続の危機イベント」に該当し、損失条項の発動を意味するとスイス連邦金融市場監督機構(FINMA)は主張。クレディ・スイスが完全に閉鎖となれば、銀行危機に歯止めがかからなかっただろうと、スイス中銀のヨルダン総裁は別の場で述べた。
2750億ドル(約36兆2000億円)規模の欧州CoCo債市場でこれほどの大規模な政府決定は初めて。CoCo債は世界金融危機後に、銀行整理のコストを納税者ではなく投資家に負わせる手段として導入された。
クレディ・スイスのCoCo債の価値をゼロとする19日の発表は投資家を激怒させた。典型的なシナリオではまず株主が損失を被るが、クレディ・スイスを巡る案では33億ドルの株主価値が保全されたためだ。
19日の発表後、クレディ・スイスのAT1債最大保有者の一つであるブルーベイ・アセット・マネジメントは、スイス当局の「間違った措置」を批判。JPモルガン・チェースのロベルト・エンリケ、ドリシュティ・シャーマ両氏は政府発表前のリポートで「存続の危機イベント」の要件が満たされていないと論じていた。
投資家は償還請求の道を探るために法的アドバイスも求めている。
AT1債は「スイスにおいて、銀行の株主資本が完全に使い果たされる前に価値が切り下げられるか、普通株等ティア1(CET1)資本に転換されるように設計されている」とFINMAは説明。「大手銀行が公募したAT1債は、そのリスク特性と額面の大きさから主として機関投資家が保有している」と付け加えた。
20日には世界でAT1債が売られ、スイスの銀行のAT1債の利回りは他の欧州銀に比べ高くなった。
スイスAT1債のリスクプレミアムが急上昇、クレディS無価値で
欧州と英国の当局は、それぞれの法管轄下では株主資本がまず損失を吸収すると明言。スイスが例外であることが示され、市場は幾分安心した。
FINMAによると、クレディ・スイス債の目論見書には、例外的な政府支援を受けるなど存続を危ぶませるイベントが発生する場合、CoCo債の価値はゼロになるとの条件が明記されている。
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