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概要:米経済のソフトランディング(軟着陸)の期待が高まるか否かは、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる金融当局が当局目標を大きく上回るインフレ率を容認するかどうか次第となりそうだ。
2023年7月24日 10:15 JST
今週予想される利上げ、現行の引き締めサイクルで最後の可能性
2%目標堅持の当否で見解分かれる-サマーズ氏とエラリアン氏
パウエルFRB議長
Photographer: Mandel Ngan/AFP/Getty Images
金融当局者と金融市場にとっての重要な問題はその後の展開だ。バーナンキ元FRB議長は、今週予想される利上げが現行の金融引き締めサイクルで最後のものとなる可能性があるとしている。
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昨年3月に利上げを開始した米金融当局はこれまでにフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標レンジを計5ポイント引き上げているが、どの程度のインフレをどのくらいの期間、容認する用意があるかに多くが左右されるだろう。
リセッション入りがない限り、労働力需要は引き続き供給を上回り、労働市場はタイトな状態が続くと見込まれる。その場合、賃金の伸びは高止まりし、労働コスト上昇をカバーするため、企業は値上げを迫られることになる。
JPモルガン・チェースのチーフエコノミスト、ブルース・カスマン氏は「システムから物価圧力を取り除くには、リセッションなしで十分な需要圧縮を得るのは困難だろう」とし、リセッションがない限り「インフレ率が持続的に3%を下回るとは考えられない」と語った。
この結果、米経済が年内にリセッションに陥らない場合は特に、金融当局が今週利上げを決めたとしても、将来的にさらに金利を引き上げなければならなくなるだろうと、カスマン氏は話す。なお、JPモルガンは基本シナリオとして7月の利上げが今回のサイクルで最後になると予想している。
スティーフル・ファイナンシャルのチーフエコノミスト、リンゼー・ピエグザ氏は「金融当局が様子見を続けられるほど十分なことを行った証拠はない」とし、当局が現行5-5.25%のFF金利を最終的に6%に引き上げるとみている。
異なる見解
米金融当局に対し早い段階でインフレ高進を警告していた著名エコノミストの間でも、当局が先行きどのように政策運営を進めるべきかを巡り見解が分かれている。
アリアンツの首席経済顧問を務めるモハメド・エラリアン氏は米金融当局について、インフレ率を2%に押し下げるために景気悪化を招くべきでないとして、3%前後のインフレ率を受け入れるよう呼び掛けている。
一方、サマーズ元米財務長官は、現時点で3%以上の目標で甘んじるのは悪いアイデアであり、次の景気循環で一段と強い物価の伸びをお膳立てすることになりかねないと話す。
ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の米国担当チーフエコノミストであるアナ・ウォン、スチュアート・ポール両氏は、「インフレ抑制の進展を逆転させる恐れがある潜在的にマイナスの供給ショックの兆しが幾つかあり、金融当局が2024年末に向けて利上げ再開を迫られるかもしれない」と分析する。
その上で、「われわれとしては当面、7月の利上げ後は『長期の停止』の軌道に乗って、将来的には利上げを再開する可能性は小さくないだろう」との見解を示した。
なお、米国のインフレ率は昨年の高水準からは大幅に鈍化している。これは主に、新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻を受けた物価上昇圧力の緩和を反映したものだ。
ただ、インフレ率を年率2%に回帰させる上で、サービスセクターが焦点となる最終局面は一層険しいものとなる公算が大きい。同セクターでは、物価に下方硬直性があり、賃金が企業の事業運営コストの大きな部分を占める。
5月の個人消費支出(PCE)総合価格指数は前年同月比3.8%上昇となり、エネルギーと食料品を除くコア指数は同4.6%の上昇だった。
元FRB金融政策局長で現在はドレイファス・アンド・メロンのチーフエコノミスト、ビンセント・ラインハート氏は「最後の局面が難しい」とした上で、「リセッションの可能性が高まれば、金融当局は物価安定の追求を断念するだろう」と述べた。
パウエル議長は2%の物価目標の達成には時間がかかり、恐らく25年以降になると認めつつも、当局として目標実現の方針に変わりはないと指摘している。議長はまた、そのためには労働市場の軟化が必要になるだろうとする一方、失業率の急上昇やリセッションを引き起こすことなく、達成可能だと想定している。
ブルームバーグ・オピニオンのコラムニストも務めるエラリアン氏は米金融当局に関し、インフレ率を目標に押し下げる取り組みを推進して金融市場もしくは経済に何らかの破綻を生じさせるか、2%の物価目標達成は容易でないと認識して目標見直しの準備をするかの二者択一に10-12月(第4四半期)時点で直面する可能性があると話す。
3%
エラリアン氏は世界的なサプライチェーン再編や温室効果ガス排出実質ゼロへの移行コストといった複合的要因を考慮し、金融当局が物価目標を2%ではなく3%とすべきだと主張している。
このほか、ピーターソン国際経済研究所のアダム・ポーゼン所長も、「インフレ率を9%の水準から3%に押し下げるのであれば、2%の代わりに3%でストップすると言っても信認を失うことにはならないだろう」と述べ、高めの目標を提唱する。
これに対し、ブルームバーグテレビジョンに定期的に出演するサマーズ氏は、経済の基調的な諸力が物価を押し上げるとして、現時点で高めのインフレ率を甘受すれば、先行き問題につながると警告する。
サマーズ氏は「どのような目標を設定するにしても、サイクルの平均値ではなく下限となる公算が大きい。景気回復局面ではインフレ高進の可能性がある」とコメント。「3%を下回るインフレ率でのソフトランディングの確率は以前よりも大きくなっているが、依然として50%にははるかに届かない」とも語った。
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