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概要:今週は6週間前と同様、米連邦準備理事会(FRB)、欧州中銀(ECB)、日銀の金融政策決定会合が行われる。それぞれの会合の曜日も6週間前と同じで、水曜日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、木曜日にECB、金曜日に日銀の金融政策が公表される。
[東京 24日] - 今週は6週間前と同様、米連邦準備理事会(FRB)、欧州中銀(ECB)、日銀の金融政策決定会合が行われる。それぞれの会合の曜日も6週間前と同じで、水曜日に米連邦公開市場委員会(FOMC)、木曜日にECB、金曜日に日銀の金融政策が公表される。
7月24日、今週は6週間前と同様、米連邦準備理事会(FRB)、欧州中銀(ECB)、日銀の金融政策決定会合が行われる。
6週間前、FOMCは予想通り政策金利を据え置いたが、委員の政策金利予想を示すドットが予想以上に引き上げられ、タカ派的なメッセージが発せられた。
ECBはコンセンサス通り25bpの利上げを行ったが、声明文はタカ派的でコアインフレ予想が大きく引き上げられた。
一方、日銀は市場の予想通り金融政策を据え置き、声明文にも変更はなかった。
その前に豪中銀(RBA)とカナダ中銀が予想外の利上げを行っていたこともあり、日本とその他先進国の金融政策の方向性の違いが鮮明になった。
この結果、1週間全体でみると、円独歩安となり、円は2番目に弱かったドルに対しても1.7%も下落した。
<7月の米欧日会合後、円売り強まる公算>
今週のFOMCでは25bpの利上げが予想されている。今後のガイダンスについては「追加引き締めが適切」との点に変化はないだろう。ハト派の中には様子見を好む人もいるかもしれないが、反対票は投じないのではないか。
6月FOMC時に示されたドットでは、年内25bpの利上げ2回の可能性が示された。パウエル議長の記者会見ではこの点について、今後の政策決定は事前に決まっていないため追加利上げはデータ次第と述べるにとどめると予想する。
ECBも政策金利を25bp引き上げると予想されている。前回会合では利上げを行うと共に7月に追加利上げを行う可能性が高いことも示唆した。
しかし、今回も次回9月会合での利上げ可能性を示唆するかは微妙かもしれない。ラガルド総裁は9月会合での利上げ判断のカギとして、今後の経済指標や最新のスタッフ予想次第として、慎重な姿勢を示す可能性もある。
こうした中で、日銀が市場のコンセンサス通り、今回も金融政策を据え置いたとすると、6週間前ほどではないにしろ、日本とその他の主要中央銀行の金融政策の方向性の違いが鮮明になり、より一層円が売られることになるだろう。特に、FRB、ECB双方が次回9月の会合での利上げの可能性を比較的明確に示唆した場合、よりその傾向が強まるだろう。
<日本のファンダメンタルズに変化>
日本の経済ファンダメンタルズは、現在の超金融緩和スタンスのある程度の調整を正当化する、と筆者は考えている。変動の大きい生鮮食品・エネルギーを除いた消費者物価指数(コアコアCPI)の前年比は、すでに3カ月連続で4%台を記録している。
米国のコアとほぼ同じ基準の食料(酒類を除く)及びエネルギーを除いたベースでみても、前年比プラス2.6%と2%台に乗せている。労働市場のタイト化から賃金の伸びも高止まりするだろう。
こうした状況下で、緩和効果と副作用のどちらが大きいか分からないイールド・カーブ・コントロール(YCC)さえ止められないとすれば、今後も止める機会は訪れないのではないかとさえ思ってしまう。
<円にとって重要な3つのファクター>
筆者は、今週の日銀金融政策決定会合で金融政策の修正が行われない場合、円相場に対する意味は、以下の理由から非常に大きいと考えている。
一つ目は、次の金融政策決定会合まで約2カ月もあることだ。日銀の金融政策決定会合のインターバルは通常6週間─7週間だが、7月と8月の会合の間は8週間となっている。今回動きが無ければ、基本的に8週間後の9月22日まで金融政策の変更は無いということになる。
その間、YCCに関する不確実性が少なくとも短期的には低下すると考えられる。特に足元の状況で金融政策の不確実性が高まると、円の上昇バイアスをもたらしやすい。逆に言えば、不確実性が低い期間が長ければ、その分円が下落し安くなると考えられる。
二つ目は、次の展望レポートの公表が10月31日になることだ。仮に今回、金融政策が据え置かれることになるとすれば、2023年度のコアCPI予想は上方修正されたとしても、2025年度の予想(前年比プラス1.6%、BOJコアの予想は同1.8%)は据え置かれるか、引き続き2%を下回る水準に止め置かれるだろう。
YCCを修正するのに、必ずインフレ予想を上方修正しなければならないことはないが、政策変更を整合的に説明するとすれば上方修正した方が好ましく、そうした場合、次のチャンスは3カ月も先になってしまう。
三つ目は、日本の実質金利マイナス状態の長期化と日米実質金利差の拡大だ。当社は、日本のインフレダイナミクスは明らかに変化していると考えている。物価上昇圧力は幅広い財・サービスに拡大しており、構造・循環的要因が組み合わさって賃金圧力は高まり、インフレ期待も高めている。
こうした中で、政策変更を先延ばしにすればするほど、日本の期待インフレ率は高まり、実質金利のマイナス幅はさらに拡大することになるだろう。日本の名目金利とコアCPIを用いて算出する実質金利は、既にマイナス3─4%と大幅なマイナスになっているが、市場が織り込む日本の期待インフレ率は、今年に入ってから上昇してはいるものの、依然として1%台前半と控えめである。
今週の会合でも日銀が金融政策を修正しないことで、市場の期待インフレ率が一段と高まり、日本の実質金利のマイナス幅が一段と大きくなる可能性もある。
米国側では「インフレ率鈍化期待」が高まり、FOMCでは「一定程度のタカ派姿勢」が維持されれば、米国の実質金利は上昇しやすい。
一方、日本側では「インフレ期待」が高まる一方、日銀は「驚くほど慎重で動きがない」となれば、日本の実質金利は低下しやすい。今週の両中銀会合でこうした見方が強まれば、日米実質金利差は一段と拡大し、ドル/円を押し上げることになるだろう。
編集:田巻一彦
(本コラムは、ロイター外国為替フォーラムに掲載されたものです。筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
*佐々木融氏は、JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長で、マネジング・ディレクター。1992年上智大学卒業後、日本銀行入行。調査統計局、国際局為替課、ニューヨーク事務所などを経て、2003年4月にJPモルガン・チェース銀行に入行。著書に「インフレで私たちの収入は本当に増えるのか?」「弱い日本の強い円」など。
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