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概要:0.1ポイントにこれほど大きな意味があるのはまれだ。
0.1ポイントにこれほど大きな意味があるのはまれだ。
日本銀行の植田和男総裁は4月の就任以来、マイナス金利に懐疑的とされてきた。最近、この異例な政策が早期に終わるとの期待から円相場が急騰したもかかわらず、日銀は人々の貯蓄にペナルティーを科すような政策を打ち切ることにプレッシャーを感じていないはずだ。
先週見られた1日足らずでの1ドル=147円台から141円台という円急伸は、自然災害時に見られるような動きだ。日銀の黒田東彦前総裁は2016年、政策金利をマイナス0.1%に引き下げた。投資家の意表を突くことの多かった黒田氏が講じた金融緩和策の一部が今解除されつつあり、政策金利をプラスに戻すのは自然な次のステップように思える。
植田氏が前任者の実験に終止符を打ちたいと考えているのは明らかだ。だが、それを実行する余力があるかどうか、あるいは実行するにしても適切なタイミングが得られるかどうかは別問題だ。
最近の植田氏と氷見野良三副総裁の発言から、投資家は恐らく日銀が18、19両日開催する金融政策決定会合ですぐにでも方針転換が行われると判断した。
だがその後、日銀当局者は決定を急ぐ必要はほとんどないとみていると報じられ、来週の決定会合が「ライブ」化すると見越す取引の多くが解消、円高は急速に巻き戻された。
こうした状況は、日銀が何を示唆しているのか、あるいは示唆していないのかを解釈することの難しさを浮き彫りにしている。
植田氏は7日の国会答弁で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と語ったが、その真意は分からない。植田氏の行動によってそうなるのか、それとも海外経済の状況変化といった外的要因によってそうなるのか。
驚くような円急伸は、日本だけでなく世界についても多くのことを物語っている。どの国でも政府や中央銀行は国内情勢が最優先だと公言したがるが、実際はそれだけではない。
投資家らは今年見られた為替相場トレンドの一つが終わりつつあることを察知。しかしそれは、一部日銀幹部の発言からだけではない。相場動向には海外情勢が変化したとの見方が強まっていることも反映されている。
審議委員時代
円相場低迷の理由は日銀の緩和策だけではなく、他の主要中銀による利上げも影響しているが、そうした引き締めの動きは終わりを告げつつある。焦点は米連邦準備制度がいつまで高水準の政策金利を維持するかから、いつ利下げを始めるかへと急速にシフトしている。欧州中央銀行(ECB)もしかりだ。
以前の日銀会合では、市場との意思疎通や誤った市場の解釈がいかに厄介なものかが露呈したこともある。
10月31日に開かれた会合の決定が正式発表される12時間余り前、日銀がイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の再修正を議論すると日本経済新聞などで報じられ、その後にこの報道が事実だと裏付けられた。
日銀は同日の声明で、連続指し値オペについて毎営業日実施の文言を削除。このことを軽微な微調整とする意見もあるが、元日銀理事の早川英男氏がロイター通信に語ったYCCの「事実上の撤廃」という言葉は的を射ている。10年国債利回りの上限1%は単なる「参考値」に格下げされた。
早川氏は来年4月に最初の利上げがあると見込んでいる。植田氏がマイナス金利脱却を今月急がないことは、大きな意味がある。今年中に何もかもする必要はない。植田氏は一世代前の論争が絶えなかった時代に日銀審議委員を務めていた自身の姿を思い起こせばいいのだ。
2000年8月の日銀会合時、日本経済は当時10年続いた低迷から回復しつつあり、デフレリスクが低下。ゼロ金利という過激な政策を打ち切るのに十分な景気の勢いがあるとの意見が多数を占め、市場もそのような動きを予想していた。
この会合で示された利上げ案に疑問を呈した2人の委員のうちの1人が植田氏だった。正式に反対するという異例の行動に出た植田氏は、経済が正しい方向に進んでいるものの、ゼロ金利解除をもう少し待っても害はないと主張。植田氏は正しかった。この時の利上げは今では大失敗だったと広く認識されており、翌年には撤回せざるを得なかった。
その教訓が来週、植田氏をどこに導くかはまだ分からない。外為市場のヒステリーが収まったのは悪いことではない。われわれが必要としているのは、辛抱強い強気相場だ。
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