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概要:米国株式相場は続伸。連邦公開市場委員会(FOMC)のハト派傾斜と経済のソフトランディング(軟着陸)期待に支えられた買いは、市場の反応が規模もスピードも過剰だったとの観測に抑えられ、勢いをやや失った。
ミラー・タバクのチーフ市場ストラテジスト、マット・メイリー氏は連邦準備制度理事会(FRB)メンバーによるハト派寄りの発言を、パウエル議長が追認したことに留意を促した。これがFRB内でのリセッション懸念を意味しないとの想定に基づけば、リスク資産を買い続けても大丈夫だという青信号がともったことになるとメイリー氏は述べた。
「債券も株も、短期ベースでかなり買われ過ぎてしまったことを指摘しなくてはならない」とメイリー氏。「従って、遠くない将来に何らかの揺り戻しはあり得る」と述べた。
出所:ブルームバーグ
UBSグローバル・ウェルス・マネジメントの米州担当最高投資責任者(CIO)、ソリタ・マルチェリ氏は「市場は利下げペースの織り込みを急ぎ過ぎているというのが当社の見解だ」と話す。「この金利サイクルの経験から、FRBの言うことに耳を傾けるのが得策だと考えている。FOMCは追加利上げを控え、2024年半ばまでに利下げを開始し、来年末までに合計75bpの利下げを実施するというのが、当社の基本予想だ」と述べた。
今年最後のFOMCをきっかけに金融市場全般に活気が戻り、これに気をよくしたウォール街の大手米銀では、来年の利下げ開始前倒しとペース加速を予測する声が上がっている。
ゴールドマン・サックス・グループのエコノミストは、3月から3会合連続の利下げを予想する。バークレイズは来年3回の利下げを予想。FOMC前の時点では1回しか予想していなかった。JPモルガンは利下げ開始予想を7月から6月に前倒しした。
個別株では電気自動車(EV)大手テスラと北欧全域の労働組合との対立が金融市場に波及する恐れが出てきた。年金基金や資産運用会社のグループがテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)に方針変更を促す書簡を送付したためだ。
メルクとモデルナが開発した個別化ワクチンに、進行した皮膚がんの再発を3年間防ぐ効果があるとの新たな研究結果が明らかにされた。
米国債
米国債市場は続伸。FOMC後の買いが続いた。先物やオプション、現物に至るまで出来高は軒並み高く、ハト派的なポジションを巻き戻して利益を確定する動きと、さらにアップサイドへヘッジを仕掛ける動きが交錯した。朝方の米経済統計を受けて、長期債には実需勢の買いが入った。
国債 | 直近値 | 前営業日比(bp) | 変化率 |
---|---|---|---|
米30年債利回り | 4.04% | -13.5 | -3.23% |
米10年債利回り | 3.92% | -9.8 | -2.43% |
米2年債利回り | 4.38% | -4.5 | -1.01% |
米東部時間 | 16時43分 |
10年債は米国内外の実需勢やヘッジファンドの買いといった、フロー主導の値動きだった。30年債に対してはアセットマネジャーや保険会社による取引が活発化した。こうしたフローに伴い、5-30年債スプレッドはフラット化し、14ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)付近となった。
FOMCの緩和転換シグナルを受けて、債券界の大物2人が異なる見解を示した。
ダブルライン・キャピタルの創業者ジェフリー・ガンドラック氏は、米金融当局が来年に計2ポイント利下げする可能性が高いとみて、米10年国債利回りが3%台前半に向けて低下すると見込む。一方、かつて米債券運用大手パシフィック・インベストメント・マネジメント(PIMCO)の最高投資責任者(CIO)を務め、「債券王」と呼ばれたビル・グロース氏は、利回りはすでに4%台で適正の水準に達しているとして、債券相場を巡る高揚感に冷や水を浴びせた。
外為
ドルは続落し、ドル指数は8月上旬以来の低水準。前日のハト派的なFOMCに続き、この日は複数の中央銀行が政策決定を明らかにした。ノルウェー・クローネは上昇。同国中銀は政策金利を引き上げ、これが最後の利上げになりそうだとの見解を示した。
為替 | 直近値 | 前営業日比 | 変化率 |
---|---|---|---|
ブルームバーグ・ドル指数 | 1221.87 | -9.67 | -0.79% |
ドル/円 | ¥141.92 | -¥0.97 | -0.68% |
ユーロ/ドル | $1.0991 | $0.0117 | 1.08% |
米東部時間 | 16時43分 |
ドルは対円でアジア時間には一時1.3%下げる場面もあった。商品投資顧問(CTA)ファンドからモメンタムの売りが出た。来週の日本銀行政策会合を控え、円コールの需要も強くなった。
主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数は、一時0.9%下げて8月1日以来の安値を付けた。前日は0.8%低下。2日間での下げは7月中旬以来の大幅となった。
ブルームバーグ・ドル指数に基づくリスクリバーサル指数は、オプショントレーダーのドル強気観が2020年9月より後で最も低いことを示唆している。トレーダーらは12月の季節的なドル安を指摘し、防戦が続く可能性があるとみている。
ユーロは対ドルで一時1.2%上昇。欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は、ユーロ圏のインフレ率が最近2%台に低下したものの、当局者は油断すべきでないと戒め、利下げが近いとの投資家の期待は時期尚早かもしれないと示唆した。ECBは2会合連続の金利据え置きを決め、中銀預金金利は4%で維持された。
ポンドは対ドルで一時1.4%上昇。イングランド銀行(英中央銀行)は、政策金利を15年ぶり高水準の5.25%で据え置いた。ベイリー総裁は声明で、インフレ退治は「まだ道半ばだ」と述べた。
Dollar Risk Reversal Is Least Bullish in Three Years
Source: Bloomberg
原油
ニューヨーク原油先物相場は大幅続伸。ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油は一時4.3%上昇し、1バレル=72ドル台を回復する場面もあった。
前日のFOMCで積極的な利上げの終了がこれまで以上に明確に伝わり、世界的な株高となる中で原油も買われた。一方でブルームバーグ・ドル指数が8月以来の安値に下げたことも、ドル建てで取引される原油の妙味を高めた。
ただ、供給過剰への懸念は根強い。国際エネルギー機関(IEA)はこの日、今年10-12月(第4四半期)の石油需要拡大ペースの見通しを引き下げた。主要国での経済活動低迷に伴い、世界で需要の伸びが急減速しているというのが理由。
世界石油需要の拡大ペースが急減速、経済情勢の悪化反映-IEA月報
CIBCプライベート・ウェルスのシニアエネルギートレーダー、レベッカ・バビン氏は「原油は他のリスク資産とともに買われている」と指摘。その上で、持続的な上昇には原油在庫の減少などが必要になると語った。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物1月限は前日比2.11ドル(3%)高の71.58ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント2月限は3.2%上げて76.61ドル。
金
金先物相場は大幅続伸。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物2月限は前日比47.60ドル(2.4%)高の1オンス=2044.90ドルで取引を終えた。
スポット価格は前日、米金融当局が従来の見通し以上に来年に積極的な利下げを実施すると示唆したことを受けて急伸していた。
金融緩和への方向転換が明確になり、トレーダーの注目は今後、金価格の持続的な上昇をもたらし得る大口投資家の動向に移るとみられる。
これまでは金利の上昇を背景に、大口投資家は利息を生まない資産である金を敬遠する傾向が強かった。それが金価格に連動する上場投資信託(ETF)からの資金流出を招き、金相場にとって大きな逆風となってきた。しかし、米金融当局が来年の利下げを示唆する中で債券利回りは低下しており、この状況は変わろうとしている。
マッコーリー・グループの商品戦略責任者、マーカス・ガーベイ氏は「金に資金が流入しやすい環境が戻ってきたことは明らかだ」と指摘。「来年に向けて、私自身は非常に強気だ」とした。
金ETFによる買いの再開が小規模だとしても、市場のセンチメントには大きく影響するとみられる。
サクソバンクの商品戦略責任者オレ・ハンセン氏は「中央銀行が2年連続で市場から1000トン余りを買っていたため、ETF投資家による売りは容易に吸収されていた。両者が買い手になる可能性がある来年はどうなるだろうか」と語った。
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