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概要:英国の農家がネパールから季節労働者を受け入れている──。家族のために高収入を得られるかもしれないと考えたネパール人のラジさん(36)は昨年、このチャンスに飛びついた。
[ロンドン 14日 トムソン・ロイター財団] - 英国の農家がネパールから季節労働者を受け入れている──。家族のために高収入を得られるかもしれないと考えたネパール人のラジさん(36)は昨年、このチャンスに飛びついた。
英国の農家がネパールから季節労働者を受け入れている──。家族のために高収入を得られるかもしれないと考えたネパール人のラジさん(36)は昨年、このチャンスに飛びついた。写真はリンゴを収穫する移民労働者。2016年10月、英サックリーで撮影(2023年 ロイター/Eddie Keogh)
2人の子供を育てるラジさんはこれまで、マレーシアやサウジアラビアでの出稼ぎ労働を経験してきた。英国での6カ月間の農作業で十分に稼ぐことができれば、二度と国外で労働せずに済むと踏んだ。
ソーシャルメディアで、月3000ポンド(約55万円)も得られるという投稿を目にしたことも大きかった。
「故郷のネパールでは、十分な働き口がない。この仕事は家族を養う上で最大のチャンスだった」
英国のビザ(査証)が切れた後も不法滞在を続けているラジさんは、仮名を使用することを条件に取材に応じた。
ラジさんは渡英前、すぐに返済できると考え、ビザや航空券費用として26万ネパール・ルピー(約27万5600円)のローンを組んだとトムソン・ロイター財団に明かした。
しかし、リンゴ農園での就労は4カ月も続かなかった。ラジさんや同僚は、農場の仕事はもう何も無いと告げられた。採用仲介業者は、他に紹介できる仕事もないため速やかに自国へ帰るよう伝え、翌年の仕事には優先的に雇うと約束した。
ただ、英国の農家は1月、ネパールやインドネシアから来た労働者の雇用を中止した。こうした労働者の多くが多額の手数料を支払って債務を負い、ビザの失効後も自国に戻っていないとの報道を受けたためだ。
既に英国内にいる労働者の一部は依然、借金を抱えたままだという。季節労働者として英国に戻ってくることはもはや不可能なため、不法残留を続けて非正規の仕事を見つけ、必要な額を稼ぐ人が増えている、と慈善事業や移民に詳しい専門家らは指摘する。
<「債務の奴隷」>
奴隷労働の根絶を掲げる慈善団体「フォーカス・オン・レイバー・エクスプロイテーション(FLEX)」によれば、移民労働者が自国のブローカーにだまされ、違法な仲介手数料を支払ってしまうケースも多いという。FLEXのルシラ・グラナダ代表はこう話す。
「このレベルの借金を抱えて入国した場合、単に自国に戻るというわけにはいかない。そのような状況に置かれれば、他の場所で仕事を見つけなければならないと考えるほうが自然だ」
ラジさんと同様、仮名で取材に応じたバハードゥルさん(40)は、地元のリクルーターに支払うための80万ネパール・ルピーを親戚から借りた。
一児の父であるバハードゥルさんは、新型コロナウイルスの流行で観光業が衰退する以前、登山ガイドを務めていた。業者からは事前に、英国の農業で働けば月に40万ネパール・ルピーは貯蓄できると伝えられていたという。
ただ実際には、果樹園で6カ月必死に働いて稼いだ賃金は全額が借金返済に消え、手元には何も残らなかった。
「業者にそれほどの大金を支払っていなければ、労働契約が終了した後は故郷に戻り、来年ここに戻ってくることもできた」とバハードゥルさん。
「だが、ローン返済のために全額を送り返さなくてはならなかった。今度は貯金して家族を助けるために働かなくてはならない」
ネパールやインドネシアからの出稼ぎ労働者の多くは自国へ戻った。一方、ラジさんやバハードゥルさんのように、ローン返済や、出稼ぎを意味あるものにするだけの金を稼ごうと躍起になり、不法就労を続ける人もいると東南・東アジアセンター(SEEAC)は指摘する。
SEEACでプロジェクト・マネージャーを務めるノバ・フランシスカ・シリトンガ氏は、あるインドネシア人の労働者は家族の住む家を抵当に入れ銀行のローンを組んでいたと話す。近隣住民に借金をした人もいたという。
「もし返済できなければ、村で恥をかくことになる。悪徳業者が家族の元に向かう可能性もあるだろう」
負債を抱え英国にとどまることを望むインドネシア人を相手に、偽造した英国の滞在許可証や運転免許証を2500ポンドで販売する詐欺事件も起きた、とシリトンガ氏は明かした。
バハードゥルさんは季節労働者ビザの期限が切れた後、亡命を申請した。内務省が審査する期間は滞在を続けられるようにするためだ。ただ、認定されるとは全く期待していない。
「ここに長期間とどまることはできないのではないかと不安だ。内務省の決定を経て、ポルトガルに行くか、ここで不法滞在を続けるか、どちらかだ」
ネパール人労働者の中には、より容易にビザや仕事を得られると信じてポルトガルなどの欧州諸国に向かうため、密入国あっせん業者に依頼する人もいると、バハードゥルさんとラジさんは指摘した。
ラジさんは労働者が借金返済のためにそこまでしなければならないのは不当だと訴える。
「外国での仕事のために、ローンを組んで負債に縛られなければならないなんておかしい」
<労働者不足>
これまで英国では、季節労働者の大部分をウクライナ人が占めていた。だが2022年2月にロシアがウクライナへの侵攻を開始して以来、公式統計を見ると季節労働者数は激減した。
「スキーム・オペレーター」とも呼ばれる少数の認定リクルーターは、労働者不足の穴埋めとしてアジアに目を向けている。
英国政府は今年3月までの1年間で3万5000件以上の季節労働ビザを発給。公式データでは前年比10%の伸びだ。
こうした労働者の数はさらに増える見込みだ。について、英政府は今年と来年、季節労働者ビザの定数を4万5000人へと引き上げるとしている。制度の試験的導入が始まった2019年の2500人を大幅に上回る。
慈善団体からは、海外での採用活動が規制されなければ、債務に苦しむ労働者が増えるかもしれないと危惧する声も上がる。
「実際に何が起こっているのか、ほとんど明らかになっていない。政府は規制に関しては干渉しない構えだ」と労働者権利団体のマリリン・クローサー研究員は言う。
英国のスキーム・オペレーターらは今年、ネパールやインドネシア人労働者との契約締結を停止し、バングラデシュなど他のアジア諸国で採用活動を開始した。
公益法人「反人身売買・反労働搾取団体(ATLEU)」のジョアンナ・ホワイト氏はこう指摘する。
「体系的な解決になっていないどころか、問題が国から国へと移動しているだけだ」
<リスクの削減>
英内務省は季節労働者政策について、「同国の農業経済にとって不可欠」であり、外国人労働者には毎シーズン、ビザの失効後は出国するという条件で再申請を許可していると述べた。
同省と、4万6000戸以上の農家が参加している全国農民連盟(NFU)はメールで別々にコメントを寄せた。両者とも違法就労手数料についての言及は控えたものの、労働者への福祉については真剣に受け止めていると表明した。
一部のオペレーターは、採用プロセスの改善を試みているとしている。「リージェンシー・リクルートメント」は、最近認可を受けてバングラデシュの労働者を採用している企業だ。採用段階でのリスクを減らすため、反奴隷労働を掲げる慈善団体と連携したという。
管理責任者のナシーム・タルクダール氏は、チームが徹底した面接や身元照会を行い、第三者経由の履歴書は受け取らず、約50人のみ採用するところから始めたと説明した。
「システムが人々をだますために悪用されているのは、ただただ遺憾だ」とタルクダール氏は言う。
「だからといって、私たちのように現状を打破しようとしている企業の動きまで止めてはいけない。このシステムを持続可能なものにしたいと考えている」
前出のラジさんは、様々な細かい仕事をこなして家族に渡すだけの十分なお金を稼ぎたいと考えている。
「英国での永住や、パスポートや市民権の取得といった大それたことは考えていない。お金を稼いで故郷の家族に送りたい。ただそれだけだ」
(Lin Taylor記者、Chandan Kumar Mandal記者)
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